第21話、夢追いババたれ4
「夢男に会い、そしてつながった!」私はかなり有頂天になっていた。まだ胸のどきどきが治まらず空気がなかなか入ってこない肺のために大きく深呼吸をした。2,3度繰り返してもまだまだ空気が足りない感じで、私は蛇口をひねってコップに水を注ぎ、そしてもう一度大きく深呼吸した後、水を一気に飲み干した。右手を蛇口の上に置きさっき起こった出来事、彼と交わした会話を思い浮かべていた。それは夢ではなく現実に彼と出会い、そして小さな約束も果たせたのだ、、、暫くすると胸につかえていたものが消え空気が自然に入ってきた、と同時に手の震えも消え始めていた。「道子さん、、、」私の一部始終をみていたのだろうか、丁度落ち着いたところで幸子さんが声をかけてきた。「あの、、ジムのことなんだけど、、、」幸子さんは少し遠慮がちに話し始めた。「えっとね、、道子さんがどういうつもりで彼と会うのか知らないんだけど、、その、言いにくいんだけど、彼、たまにね、女の子とよく来るのよ、、ここへ、、。」「え?」幸子さんの言っている意味がまだ分からずにいた。「ただの友達かも知れないんだけど、、いつも特定の女の子なの、、日本人の子でね、付き合っている雰囲気は十分あったんだけど、その、、深入りする前にちゃんと調べた方がいいかしら、、って思ってね。」「ジムに彼女、、」思ってもいないことだった。ジムは私の運命の人で彼女がいるわけなど無いと信じきっていた。「まっさか~、もし彼女がいたら連絡先なんて教えませよ~」幸子さんは申し訳なさそうな顔で暫く黙っていた。いや、今思えば、あれは申し訳ない顔ではなく私を少し哀れんでいた顔だったのかもしれない、、、彼女は全てを見通していたのだろうか?「そ、そうかもね、、私の勘違いかもしれないわね、、」幸子さんの言葉を濁したような台詞でジムについての会話は終わった。私は幸子さんが言っていたことなど店を出たと同時に忘れ、右手には彼の名刺を握り締め急いで自分の部屋へと帰った。30を過ぎた自分の生活はカナダに来たからと言って、早々変える事が出来ず、初めはホストファミリーとして一緒に住んでいたホストペアレンツも、今では部屋だけを貸し出しているオーナーに代わっていた。ホストファミリーとして一緒に住んでいた頃は「帰りが遅い、何処へ行っていた?誰と遊んでいた?」など、いちいち聞いてくるうるさい親のような存在だったが、部屋貸しオーナーに変わってからは私の私生活に全く干渉してこなくなっていて、「二十そこそこの娘じゃあるまいし、、」と、不満を募らせていた私にはかなり好都合だった。家に着くと、私は何も言わずに自分の部屋へと直行した。ドアを開けカバンをベッドへ放り投げるとすぐにパソコンのスイッチを入れて自分のメアドを開いた。早速、愛しのジムにメールをするためだった。 続くこのお話を気に入っていただきましたらクリックお願いします^^