テーマ:本日の1冊(3683)
カテゴリ:ミステリ以外の小説
その日、横須賀基地は桜祭りでにぎわっていた。
基地内が市民に開放され、多くの民間人が訪れていたところに、海の中から現れたのはザリガニに似た巨大甲殻類だった。 突然出現した怪物は人々を襲い、食べはじめる。 機動隊が救助に走り回るが、歯が立たない。 一方、逃げ場をなくし、海上自衛隊の潜水艦「きりしお」に避難した13人の少年少女と2人の若き自衛官は、艦内にたてこもることになる。 ここまで読んで、巨大なザリガニが襲ってくる、なんて荒唐無稽な、と思った方も多いでしょう。 私も友人に薦められた時に「え~っ!?」と思いましたが、それだけの話ではありませんでした。 読み進めるに連れ、ページを繰る手が止まらなくなりました。 ザリガニ(本当はエビ?)が、人を襲うシーンは残酷だしおぞましく苦手でしたが、彼らに立ち向かう、警察や自衛隊の描写にはかなりのリアリティがありました。 日本の政治的要因や、抱える問題点さえ見えてくるので、緊急事態に陥ったときには、本当にきちんと対処ができるのだろうかと、ミサイルが飛んでくるような今だからこそ、切実に心配になりました。 機動隊は頑張りました。 たかが甲殻類とはいえ、とても太刀打ちできないのですが、機動隊員たちは負け戦と承知していながら、作戦を遂行しようとするのです。 人が命を賭けて、人を助けようとする姿にはぐっときます。 平行して進行する、横須賀港に閉じ込められた潜水艦の乗組員と子供たちのことが、この物語の中心といってもいいでしょう。 そこには、自衛官への反発、子供同士の対立、親子の関係や、少年期の心の問題まで、様々なテーマが詰まっています。 作者があとがきで、初めは「潜水艦で十五少年漂流記」というコンセプトのはずだったと明かしています。 結局、漂流はしませんが、互いにぶつかったり協力し合ったりしながら、少年たちの関係が変わっていき、成長していくところには、その面影(?)があります。 作者は男性なのに女性特有のことまで詳しく書かれているな、と思っていましたが、有川浩、という名前は、ありかわひろし、ではなくて、ありかわひろ、という女性(しかも主婦)だったのでした。なるほど……。 ついでに紹介すると、この方は2003年「塩の街」で第10回電撃ゲーム小説大賞を受賞。同年同作にてデビューされています。 他には「空の中」「図書館戦争」という作品があります。 こういう状況の中ですが、青春も、恋もあります。 最後のシーンが、とてもさわやかなんですが、そこは好き嫌いがあると思います。 私は結構好きでした。 これはミステリではありませんが、有川さんの他の作品も読んでみたいと思わせる作品でありました。 薦めてくれた友人に感謝! ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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