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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪

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2009年05月02日
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トールはルキアの研究小屋にいた。
分厚い魔法書を何冊も机の上にひろげ、難しい顔でページを繰っている。
半分ほどあけた窓から、ここちよいそよ風が吹いてきた。甘い花の香りがするのは、泉のほとりの花畑が満開になっているからだろう。

春風にのって、ふあん、とかすかな気配が銀髪の流れる肩の先にあらわれた。
気づいて視線をあげれば、うっすらと緑の少女が見える。
目が合って微笑みかけると、むこうも微笑んでふっと消えた。

トールが仕事に忙しいのを見て、邪魔しないように来てくれたもののようだ。
そんなことが何度かあって、あるときトールは希薄な気配に穏やかな声をかけた。

(ここへ来たくなったら、いつでもそのままで来てくださってもいいんですよ、お姫様)

(そんなこと言うとほんとに遠慮しないぞ)

(心からお待ちしておりますとも)

トールは微笑んだ。実際、緑の少女は錬金術師の部屋でそれほど邪魔をしたことはないのである。あまり周囲には信じてもらえないのだが。


彼女がやってきたのは、トールが一日の仕事を終えてソファでくつろいでいるときだった。
手にとって眺めていた透明なクリスタルをテーブルに置いて、彼はドアまで少女を迎えた。

「ようこそ・・・・・・。ついにはじめたんですね? でも、無理はしなくていいんですよ」

理由に心当たりがあったから、彼女が何か言うより先に口を開く。少女は伏せていた睫毛をあげ、信頼をこめて長身を見た。
いつも優しくてもの柔らかで、しかし彼の踵はつねに最後まで少女の味方の位置から動かない。その見えざる強さを彼女は知っていた。

「うん。でもさ・・・・・・つらくなったらおまえがいてくれるだろ?」

「いますとも。いつも、いつでも・・・・・・あなたが、もういらないとおっしゃるまではね」

ソファまでエスコートしながら答えると、ふいに彼女がふりむいた。

「・・・・・・い」
「?」
「いらなくならない。ずっと、いらなくならない」

泣きそうな顔で、少女は高い位置のトールの首に抱きついた。少し背をかがめてくせのある茶色の髪に顔を埋め、トールはそっと彼女を抱きかえした。

「ええ・・・・・では、ずっと」

暖かな手で小さな背をぽんぽんとたたく。身体を離すと、少女は目をそらして少し自嘲的に言った。

「ごめん。・・・・・・あたし、ずるいよな」

「なぜ?」

「だって。おまえはいつだってあたしのそばにいてくれる。あたしがどこか他を見ていても、それでも変わらずにそばにいてくれる。
だけど・・・・・・だけどさ、あたしはどうしたって、百パーセント誰か一人のものにはなれないんだ。
そのときの気持ちに嘘はないけど、その時だけだ。大好きだ、って思う相手のことは、皆同じように大好きだから。
ずっとそばに、って言ってもらえたら嬉しいけど、でもあたしは約束しかえすことができない」

人には約束させといて、ほんとずるいよな、と呟く。

「そんなこと。百パーセント誰かのものになれる人なんていませんよ」

優しく少女の背を押してソファに座らせ、笑いながらトールは言った。見返してきた彼女の顔を青灰色の瞳でとらえて続ける。

「人はね、誰でも自分のものなんです。自分と相手が同時にそう望んだときに、刹那のような同じ時間を共有できるだけ。
だから一期一会なのですよ。
あなたはあなた自身のもの・・・・・・それでいいんですよ」

「おまえも? おまえもそれでいいのか?」

眉根をよせた少女の疑問に、彼女がソフィアのことを言っているのだとわかった。トールは自分もソファに腰かけ、背もたれによりかかってふっと息をついた。

「彼女も、ただ彼を独占したいわけじゃないんです。
本当は何より喜ばせたかった・・・・・・方法がすこしばかり間違っていたようですが」

「じゃあおまえは?」

重ねて訊いてくる少女に、トールは苦笑を見せた。かきあげた結ばないままの銀髪を、そよ風がなぶってゆく。

「そうですね・・・・・・、独占したい、とわずかなりとも思う瞬間がないといったら、嘘になるでしょう。
けれども私は、あなたの輝いているさまが好きなのです。
もしもあなたが私の隣にずっといてくださったとしても、そのことによってあなたの輝きが損なわれてしまうなら、私にとっては何の意味もない」

「あなたを束縛して苦しめるくらいなら、遠く自由に飛び立つ姿を見ているほうがずっといい。
そのために、この位置を選んで転生しているのですから」

青灰色の瞳が、宇宙の深淵を映して少女を見る。すぐ隣ではなく、いつも少しだけ離れたところに。彼がときに三次元の身体に制約をかけてまで、純粋に彼女を護る位置についていてくれることを、少女は知っていた。
しかし少女はぷんとふくれた。

「傍観者、なんて言うなよ。あたしはそんなの嫌いだ」

壁一枚へだてているようで、もどかしいし寂しい。もっと傍で触れたい・・・・・・けれどじゃあずっと傍にいます、と言われても、自分はありがとう、としか言えない。
相反する気持ちをそのまま表情にあらわして、結局彼女はふくれている方を選んだ。
そのようすが可愛らしくて、トールはくすくすと笑い出す。

「私がいつ、ただ見ているだけ、でしたか?」

笑いの中に真剣な光を宿して、彼は大きな瞳を見やった。これだけ関わっていたら、もう傍観者とは呼べないでしょう、と。
彼があらゆる意味で彼女のために動いていることは、もはや誰もが知っていることではあった。

「私は私の望みとしてここにあり、望んできたことを叶えているにすぎません。たとえ三次元でそれを忘れていることがあったとしてもね。
あなたも、自由に思うままに、あなたの望みを叶えてゆかれますように」

私はそれを力の限り手伝いましょう。

それこそが私の望みなのですから。

ゆったりとソファに座り、静かな海のように彼は言った。
嵐もさざなみもすべてを飲みこみ、ただ穏やかに海は彼女を包む。

いつまでも、変わることなく。


















*************

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→→登場人物紹介(随時更新)


トール&緑ちゃんの話をお待ちの方!(いるのかな)お待たせしました~
・・・このお話はけっこう自分でも気に入ってて、わりかし読み返したりしちゃいます。
なんかね~大事なこと言ってますよね~~~~~三次元の私はほえーって感じだけど(爆)

書くのが忙しくてお返事できず申し訳ないのですが、ご感想くださるととっても幸せ♪
くださった皆様ありがとうございます~~~~~感涙です><
よろしくお願いいたします!


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※連休中、セミナー参加等のため、来週水曜くらいまでメールのお返事ができないかと思います~
物語はもう書いてあるので、実家でPCが触れたらささっとアップするつもりですが
メールのお返事は自宅に戻ってからゆっくりさせていただきたいと思うので
どうぞよろしくお願いいたします m(_ _)m










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最終更新日  2009年05月02日 09時47分36秒
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