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2011年05月12日
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(アルディアス様っ…!)

大神殿の敷地に入った瞬間、脳裏に大きな声が響いてアルディアスはわずかに肩をすくめた。
心配そうな声の主はかなりの心話到達領域を持っているが、相手が敷地内に入るまではと遠慮していたのだろう。
自分もすぐに走って現れると肉声をかけてきた。

「お帰りなさいませ。よかった、本当にご無事だったのですね」

緑がかった髪を首の後ろでまとめ、細い眼鏡をかけた青年。アルディアスよりは低いが細身の長身で、グリーンアメジストの淡い瞳が優しげな印象だ。

「心配をかけてすまないね、ルカ。私は元気だよ」

肩を並べて歩きながら言うと、ルカはほっとため息をついた。

「本当にもう…。爆発事件の報告はもう生きた心地がしませんでしたよ。出陣中ならともかく、アルディアス様を狙ってなんて。お怪我がなかったからいいですが、 奥様まで狙うなんて卑怯ですよ」

彼は神殿におけるアルディアスの秘書的な位置についている。
大神官の代替わりからその位置にはいるのだが、異例に若い大神官よりもさらに二歳ほど下であるため、最初の頃は身の回りの世話や書類の整理が主な仕事だった。
アルディアスが准将になってスケジュールが比較的自由になるようになったことから、大祭の終了を境にルカも本格的に秘書につくことになったのだ。
下士官のうちは予定も上官の裁量によるため、軍側との折衝は年嵩の神官が行っていたのである。

「卑怯ですよ!」

つい饒舌になってしまうのは、それだけ心配していたからだ。そしておそらくは神殿内では皆が言っているであろうことを、直接こうして教えてくれているのでもあろう。
古株の神官達には「軍などと」という空気が未だにある。口にはしないが、兼務する大神官の秘書として、青年はその板挟みにもなっているに違いなかった。

アルディアスは一緒に歩きながら、黙ってルカの言葉を聞いていた。

「お願いですから戻ってください。いくらアルディアス様でも、そんな危険な環境ではお身体が幾つあっても足りません。軍人である前に大神官様なのですよ」

見上げてきた瞳は一途で、銀髪の男は思わず苦笑する。

「うん。……ごめん」
「……」

ルカはちょうど着いた執務室の扉を開け、今度こそ大きなため息をついた。
働き盛りの三十代。戻ってこられないことなど百も承知だが、それでも言うことが自分の責務とこころえている。

「お年を召されたら軍を引退して神殿に戻ってきて下さるのでしょうけれども……。ご結婚は嬉しいですが、新居が軍ですか」
「うん、まあ、あちらも総務に勤めているから、細切れだけど会話できるのが助かるかな」
「そういう問題じゃありませんっ。出陣とのお話を聞くたびに冷や冷やしてます。神殿はアルディアス様の家なのですよ。いいから早く戻って皆を安心させて下さい」
「……ごめんね、ルカ」

悪いと思ってる。

呟くようにアルディアスは言った。
彼が軍務に身を置くのは、彼自身の我侭でもあったから。
身に巣食う竜のような相克の衝動は、どうにかして発散されることを望んでいる。
バランスを取り人であり続けるために双極に身を置かねばならぬのは、なんと因果なことだろう。
神殿だけに居ることができれば、皆をもっと安心させることができるかもしれないのに。

「ところで、シエルは元気かい?」

執務机につき、こちらでも山盛りの仕事を前にしながらアルディアスが問うと、青年はようやく笑顔を見せた。

「相変わらずです。駆け回ってるか本を読んでるかですね。ニールス様と通信パネルでやりとりしていると、オーディン様も気にかけてくださって、よく言葉をかけてくださいますし」
「よかった。あの子が元気だと、なんだか嬉しくなるからね」
「そうですね」

顔を見合わせて笑う。

シエルは去年の市街戦でオーディンが見つけ、アルディアスを経由してルカに託された戦災孤児だった。

薄い茶色の髪に、意志の強そうなハニーカルサイト色の大きな瞳。戦時中のこととて親を亡くす子も少なくはなく、神殿には孤児院が併設されている。
九歳になったばかりのシエルはここに来て一年弱、活発だが少し不器用なところがあるのであまり友達もできず、どちらかというと一人で本を読んでいることも多かった。

よく長椅子に寝そべって読書に没頭している少年のことを、可愛くて仕方ないと青年が思っていることをアルディアスは知っている。
年の離れた弟のように世話をして、時々週末に連れ出したり自分の部屋に泊めてやったりしていることも聞いていた。

孤児院の子供達は大勢いるから、通常は一人だけの特別扱いは認められない。しかしルカ自身もまた孤独な立場であることは皆が知っていたし、シエルが凄惨な市街戦の犠牲者であることもまた周知だ。
ルカはひどく依怙贔屓するようなことはなかったし、擬似家族のような特別な関係の中で癒される傷があることもわかっていたから、ささやかな「兄弟」のふれあいは優しい眼差しの中でそっと黙認されていた。

一瞬にして親兄弟と家のすべてを目の前で喪ってしまったシエルは、ふとした時に泣きそうな目でルカの存在を確認しようとする。
そのたびに青年は淡い緑の瞳で優しく笑い、シエルの頭を撫でてやった。

「僕もずっと一人だったからね、シエルが来てくれて本当に嬉しいんだよ。大丈夫、どこにも行かないさ」

堅苦しい神殿が肌に合わないシエルは、意図するしないに関わらずたびたびルールを破ることがあった。
鷹揚な大神官ならば笑って済ませてしまうようなことでも、厳しく言い立てる立場と性質の人間もいる。
そんなときは、親代わりとなっているルカのところに全部お叱りが来るのだった。

「ルカ、お前で大丈夫なのか? ちゃんと面倒見切れないからそうなるんだ。他の担当に回したらどうだ」

年配の神官に二人呼び出されて散々に叱られても、表では神妙な表情を浮かべながらルカはまったく平気で、内心それがどうしたと思っていた。

シエルは本が好きだ。
大分減ったとはいえ規律の多い神殿は肌に合わなくても、他のどの子よりも沢山の本を読んでいる。ルカが部屋で仕事をしているときなど、よく傍の椅子で夜遅くまでじっと読書をしていた。
当然成績もかなり良く、神官たちもそこを叱ることはできない。

ルカは喧しい文句を一通り聞き流すと、いつも決まって穏やかに、しかしきっぱりと「いえ、私が最後まで世話をします」と言い切るのだった。
見た目はおっとりとした彼だが、表面に出さない胆力はかなりのものだ。

ルカにとって、希代の大神官たるアルディアスは誇りである。心の底から敬愛し、うちの大神官様は宇宙一だといって憚らないところがあった。そして、シエル少年のことも自慢の家族のように思っていた。

たくさん勉強をする子だから、その能力を神殿で活かしてほしくもあったし、同時に少年の望む自由な未来を歩かせてもやりたいと思う。
それを護るためならば、自分自身が罵倒されるくらいは何ほどのこともないのだ。

またルカは、神殿秘書として銀髪の上司の予定調整のために、軍での副官であるニールスとたびたび通信を行っている。

ルカにとってどうしても強いのは、大神官様を返してほしいという気持ち。
アルディアス自身が決めたことだから、青年が直接何を言っても笑って流されるだけなのだが、軍で信頼を置かれている貴方がたなら何とかなりませんかね、と冗談交じりに問いかけたことが何度かあった。

作戦の事はルカにはわからないから、ひたすらに無事を祈るばかりになってしまう。やや強引に意識を切り替えて、この日の神殿の催し物に出ていただきたいので折り合いを、などと話すのが常だった。

そんなとき、ニールスとよく作戦をともにしているオーディンが、通信画面の向こうからルカに挨拶しておこうと声をかけてくれるのはありがたかった。
磊落に笑う黒髪の軍曹は、シエルにとっては地獄から助け出してくれた人である。ルカも感謝していたし、シエルもよくなついていて、通信画面の向こうの姿を見ると嬉しげに声をあげていた。

「オーディンさーん!」
「よう、元気にしてんのかお前。あんまり兄貴分に迷惑かけんじゃねえぞ?」

会うたびに弟のように可愛がってくれる軍曹は、パネルの向こうでにかっと笑う。わかってるよ、と答えるシエルはとても嬉しそうにしていた。

「彼は何になりたいのかな……」

ルカの淹れてくれた紅茶のカップに口をつけながら、ふとアルディアスは椅子を回して窓の外を見た。
そこには、夏を終えてまた寒くなろうとする景色が広がっている。

シエルと初めて出会った季節が近づいてくる。
広大な神殿の敷地をも狭いと感じる少年は、どこにゆけばその翼を思い切り伸ばせるのだろう。
今は衣食住と学問の揃った神殿にいるのが善しとしても、できれば将来の夢を叶えてやりたい。

アルディアスの意識は、少年の未来から過去へと時間を遡っていった。

あれは去年の秋、回避しようとしてできなかった市街戦の後の崩壊した街。
焦土と化した土地を瓦礫を踏んで歩きながら視察をし、少女の遺体に祈り、石を投げられたときのことだった。

















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【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次


お待たせしました。お久しぶりに本編に戻ってきました!
外伝の花園シリーズに出てきた、ルカ、シエル、サラの三兄妹。その後サラさんはグラディウスの話【常蛾】に出てきましたが、
ルカさんとシエル君はこちら、ヴェール時代に会っていたのですねぇ。。。
だもの、どっちの外伝も一通り書かないと本編に戻れないわけですよ orz
私としては、本編が進まなくて内心ひそかにかなり焦ったりもしてたんですけど 苦笑
そういうわけだったのねプロデューサー様・・・。。


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最終更新日  2011年12月12日 13時19分47秒
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