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さすらいの若旦那の日記。

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2007.03.31
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カテゴリ:カテゴリ未分類
美味しいラーメンが食べたくなると、私はいつもその店に足を運ぶ。
テレビや雑誌で取り上げられたわけでもない。
どこにでもあるような、ごく普通のラーメン屋。

以前、たまたま近くを通りかかった時に何気なく入った店。
「いらっしゃい!」
厨房からドスのきいた低い声で大将が叫ぶ。

威圧的な感じとぶっきらぼうな態度に驚いた私。
「しょうゆラーメンの並ください」
私は相手の手の内を探るように、とりあえず基本的なメニューを頼む。

カウンターに陣取った私と大将の真っ向勝負。
私は彼の一挙手一投足を固唾を飲んで見守る。
コップの水を繰り返し喉に流し込みながら、敵の様子を伺う。

狭い店内は、それなりに機能的である。
大将は機敏に厨房内を行き来し、手際よく作業をこなす。
まだ春先だというのに、店内のすすけた扇風機が忙しそうに首を振っている。

大将の額にジットリと汗が輝く。
大釜からは白い湯気がもうもうと沸き立っている。
季節はずれに効いている冷房も、この空間の熱気には全く効果が無かった。

大将と私のサシの勝負。
昼間のゴールデンタイムというのに、客は私一人である。
まずいのが原因か。やはりこの寂れた店構えが影響しているのか。

不安になりながらもなお作業を見守っていた。
もう何十年もこの道を貫いているのであろう。動きには無駄がない。
やがてキッチンタイマーが静かな店内に鳴り響き、大将は大きく振りかぶった。

均一なしぶきが飛び散り、流れるように麺を器に流し込む。
すでに準備されていた器に、主役の麺が加わった。
盛り付けを整え、向き直った大将は私に「どうだ」と言わんばかりに、器を差し出した。

シンプルではあるが基本に忠実。
無骨ではあるが筋の通った一杯のラーメン。
私は姿勢を正し、手に持った蓮華に静かにスープを満たす。

大将は腕組みをしながら私の方をそっと見つめている。
一瞬、空気が凍りつく。
音を立てないように静かにスープを喉の奥に流し込む。

強烈なインパクトは無いのだが、なぜか2杯3杯と喉が欲する。
懐かしいような、ほっとするような何とも言えないあと味。
続けざまに私は、麺をむさぼるようにすすった。

大将はやがて勝利を確信したのか、そっと振り返って私から視線をはずした。
威圧感から解かれた私は、加速度的にガツガツと食らった。
不思議なことに、箸を進めても進めても飽きがこない味。

ひとしきり食べて、私の満腹中枢が覚醒を取り戻す。
玉になった大粒の汗が額から噴き出している。
総合的には及第点。すっかりその味に魅せられてしまった私。

こんなに美味しいのに、なぜ流行っていないのだろう?
みんなにこの味を宣伝したい気持ちと、自分だけの秘密にしておこうという気持ち。
両者の気持ちが心の中で綱引きしている。

実はもう一つ、その店が気に入った理由がある。
最初、大将のことを無愛想で客商売には向いていないように感じたが、
実はとても客のことを気にかけている人だったのだ。

コップの水を飲み干してしまった私に、さりげなく新しい水を差し出してくれたり。
「サービスサービス」と言いながら、自家製キムチを出してくれたり。
私が額から汗を滴らせていると見るや、さっとクーラーを強にしたり。

それが接客の基本と言われればそれまでだが、
大将に対する先入観とのギャップがあまりにも大きすぎたのである。
人は外見とか先入観では判断しない方がいい。あらためてそう思った。

奇をてらったメニューとか、斬新な店構えは必要ない。
自分の信じた味をずっと貫き、守り続けている姿。
そんな大将の姿に私は武士道に似た精神を感じ、共感をおぼえた。

そして先日もまた、武士道の精神を学びたくなった私は、
吸い寄せられるようにその店に足を運んでしまった。
がらんとした店内に先客が一人、うまそうにラーメンをすすっていた。

彼もまた、武士道の精神を学ぶ若武者のように見えた。


2005-11-26 12:37:32←←←ポチっとな!

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最終更新日  2007.04.01 21:17:33
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