メンデルゾーン法の対象
メンデルゾーン法では、患者さん自身で喉頭拳上位置に保持可能な方は少ないです。介助で行っても良いように書かれてはいますが。意識レベルI桁、注意障害があり、嚥下障害がある患者さんにメンデルゾーン法を実施しました。嚥下障害は、水分でむせを認め(水分以外の嚥下は問題なし)、舌の筋力低下、咽頭の収縮力低下、嚥下反射惹起遅延、咽頭の感覚低下、喉頭蓋の安静時の位置の低下などがありました。一般的には、食道入口部開大不全の時に行うよう書かれていますが、書籍によっては喉頭拳上の訓練としても書かれています。 「頸部聴診法の実際と摂食・嚥下リハビリテーション」では、喉頭拳上訓練のひとつとして紹介されています。 頚部聴診法の実際と病態別摂食・嚥下リハビリテーション [ 大宿茂 ]「脳卒中の摂食・嚥下障害」では、「咽頭を拳上した位置で保つと輪状咽頭筋(食道括約筋)が開きやすくなる。」「長時間絶食していて、輪状咽頭筋が開きにくくなっている症例などの基礎的嚥下訓練のなかにこの訓練を組むと効果的なことがある。」と書かれています。 脳卒中の摂食・嚥下障害/藤島一郎「嚥下障害の臨床 リハビリテーションの考え方と実際」では、「食塊の通過と喉頭の拳上・閉鎖のタイミングは合っていても、喉頭の拳上・閉鎖が弱いときは喉頭の拳上・閉鎖を強化する訓練が必要となる。したがってメンデルゾーン手技のような喉頭の拳上を強化する手技はここでも有効である。」と書かれています。嚥下障害の臨床 リハビリテーションの考え方と実際この患者さんへの手技としては、自己では困難で介助が必要でした。開始時は、私が慣れていないせいもあって、押さえる力が弱く、1秒も喉頭拳上位置に保てませんでした。何度か実施するうちにコツがつかめ、やや強めに押さえても患者さんの痛みや不快感はなく、3~4秒介助にて保持することができるようになりました。空嚥下は何度もできないため、トロミ茶を少量ずつ飲んでもらい、10回×2~3セット実施しました。一か月半程、他の嚥下訓練とともに実施しました。結果は、5ml程度の水はむせなく、気管への侵入もなく飲むことができましたが、量が増えると、咽頭に残留することがありました。結果として、VF検査で、全体に嚥下機能の向上を認めましたが、他の嚥下訓練と併用しているため、メンデルゾーン法自体の訓練効果を実感できませんでした。また、水分はトロミ付きのままとなったため、(誤嚥のリスク軽減となっているとは思いますが)、摂取形態のアップとはなりませんでした。