カテゴリ:BLEACH SS
その日は、僕たちの卒業式の当日だった。
まさかわざとぶつけたわけじゃないだろうが、黒崎もなにか微妙な顔をしていた。 この日を境に彼は「代行」ではない「死神」となり。僕は「滅却師」をやめた。 僕たちが高校に入学した頃は、霊的世界は忌々しいほどに安定していたが、この三年の間に凄まじいほど様変わりした。 一番大きいのは、死神の現世の出現率が、一桁以上上がったことだろう。 何年も捜していた死神が、今では父の病院にほぼ在中している。病院では、死者が出る確率が非常に高いからだ。 誰かが死ぬと、すかさず死神がそれを魂葬する。一般的な死神のイメージに近づいたといっていい。 整がどんどん現世から消えていく。 虚になる確率のある魂が次々消えていく。 そして、滅却師は完全にその存在意義を無くした。 「やっぱり、僕は最後の滅却師か」 できるだけ明るく言ったつもりだったが、黒崎も茶渡君も井上さんも、どこか困ったような表情で僕を見た。 「てめえ、不満でもあるのかよ」 「まさか」 死神が生者を守ってくれないとの思いから、僕たちは生まれた。 虚を殺す存在が必要だと思ったから、僕たちは退かなかった。 でも、もう僕たちは必要なくなった。 だから僕は生きている人たちを助けるための勉強を始める。 「ああ、桜だよ。今年は早いね」 「本当!綺麗だよね」 「ム」 「ああ」 ソウル・ソサエティは「技術・知識」としての滅却師の存続を許可したが、僕はもうそんなものに拘るのは止める事にした。 どうせなくなってしまうのなら、精々潔くあればいい。 花の散った桜の木のように、景色に溶け込んで見分けもつかなければいい。 別の大学に進んだ黒崎とは以後、不思議なほど接点がなく。 久々に出会ったとき、互いの第一声が 「変わったな」 だったことに、共に苦笑した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年03月30日 21時51分10秒
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