ずいぶん間が開いてしまいましたが、四国遍路日記を再開します。
真っ縦の登り―27番札所神峰寺
本札所の持つもの―27番元札所神峰神社
アスファルトの暑さ―28番札所大日寺
お大師さんの救い―29番札所国分寺
29番国分寺の国分寺でお参りを済ませ、時計を見ると15時10分。
30番の善楽寺までは約6キロ強の道のりです。
今日も結構歩いているし、気温が上がって暑いので、
早く出発しないと30番の納経(5時まで)に間に合いません。
日陰で休んでいた青年に声を掛け、休む間もなく出発します。
お寺を出る前にトイレを借り、出発すると。
先ほどの青いTシャツに半ズボンの青年が少し後ろを付いてきます。
お寺を出て1キロも歩かないうちに、道が判らなくなりました。
「五回も廻っているのに道を間違えるの?」
と言われそうですが・・・
「四国遍路は道に迷うことを恐れてはならない」
禅僧として有名な山本玄峰師は生涯17度の四国遍路を
されましたがあるとき道を間違えたそうです。
お付の者に
「老師、何回もお四国を廻っているのに道を間違えるのですか?」
と問われ
「道を覚えるために廻っているのではない」
と言い放ったという話を聞いたことがあります。
それはさておき、この辺りは、何故か遍路道の記憶がありません。
道が変ったのだろうかとも思ったのですが・・・
暑さはどんどん増しているようです。
時折、後ろを振り向くと青年が20~30メートル後ろを
付いてきます。
私は急いでいるのですが、青年は何故か離れるわけでなく
追いつくわけでなく・・・
29番から約4キロのところに遍路小屋がありますので、
それを目指してひたすら歩きます。
田圃の脇の農道を歩いていると、」農道がどんどん狭まり、
人がやっと一人通れるくらいの幅になります。
後ろから足音が付いてきます。
先ほどの青年でしょう。
しかし、譲る幅はありません。
しばらく、全力で歩いて、少し余裕があるところで
よけて振り向きました。
誰もいませんでした。
あっけに取られましたが、昨日もありました。
26番の下りで足音が付いてくるので、
振り向きましたが誰もいません。
気のせいでしょうか?
それとも何者かが付いてきているのでしょうか?
平地から少し登り、民家が切れた山際の道を登ったところに、
遍路小屋がありました。
荷を降ろし、腰を下ろします。
青年もすぐに遍路小屋に着きます。
青年が話しかけてくる。
「今日はどこからですか?」
「私は全部歩きではないんですよ」
おそらく青年は、27番~28番の間から出発したのだろう。
真っ黒に日焼けした姿は、精悍そのものでした。
徳島から歩き出して10数日は経っているであろう。
その間の苦しみ・つらさ・を背負い、別人のように変る。
歩き遍路特有のものである。
「今日は暑いですね」
その言葉の裏に、朝から歩き続けた疲労感が漂っています。
多分、彼の年齢の倍近い私が意外に元気なのに驚いて
「今日はどこからですか?」
という問いかけになったのではないでしょうか?
時計を見るともう16時10分過ぎ。
しかも、地図を見直すとビックリする事実を発見!
29番~30番間は6キロ強でなく7キロ弱
約一キロも長い(汗)
まだ、3キロもあります。
大急ぎで飴を口に放り込み、水を流し込んで出発!
果たして5時までに間に合うのでしょうか?