えー、写真家を目指そうと思ったきっかけになったエピソードをひとつ紹介したいと思います。
それは今でも忘れることができない非常にインパクトがある一言だった。まだまだ青い中学2年生の頃である。
今もそうだろうが、当時の中学生の興味の矛先といえば、アイドルか女性の裸と相場が決まっている。折しも芸能界はアイドルブーム真っ最中。次から次へと新人アイドルがブラウン管の歌番組で笑顔を振りまいている時代であった。
雑誌というのは創刊するに辺りターゲットが明確に打ち出されてカラーが決まる。現在では当たり前の手法とも言えるが、新人アイドルをセンターに起用した雑誌が学習研究社から創刊された。
「BOMB!(ボム)」である。
まぁ、青少年向けアイドル雑誌の先駆けともいえるであろうが、扱いはアイドルだけではなく、当然青少年が興味を持つ「エロ系記事」もふんだんに入っていた。雑誌社のターゲット狙いは的中し、中学生が親からもらうお小遣いの使い道が雑誌方面に伸びやすい時期でもあるため、発行部数が伸びた雑誌のひとつと言えよう。
僕は書店で「ボム!」を買い求め、学校へ持って行き、休み時間と言えば悪友達と回し読みをしていた。ちなみに悪友のひとりがその日持参した雑誌は、「週刊プレイボーイ」である。奴の方が大人だな。
我がクラスの女子は大きく2つのタイプに分かれていたと考えている。ひとつは男子と仲良くするタイプ。ひとつは女子のみで行動するタイプ。前者は一緒にワイワイするのが好きであり、後者はさらに細分化し、男子の行動を無視するグループと男子を忌み嫌うグループである。
我が校の場合、教師はそれぞれの担当教科の部屋に席を構えていた。クラス担任は理科が専門であり、何かあると「理科室へ来い!」が口癖であり、表現は悪いがナチスのユダヤ人迫害をもじって「理科室送り」と同級生の間では恐れられていた。
話を戻して、その日は「ボム!」と「週刊プレイボーイ」で一日盛り上がっていた。「この子かわいい」だの「このエッチ話はホントかよっ」だの「このおっぱいはスゲー」という、たわいもない話である。もちろん一部の悪友どもには大受けな2冊であった。
この盛り上がり方にチクチクと絡んできた女子がいた。先ほどの「男子を忌み嫌うグループ」のひとりである。
「◎◎クンたちぃー。そーゆー雑誌を学校へ持って来ちゃだめなんじゃないの?」
「なーにいってやがんだ!ブース!」
「ぎゃはははっっっ!」
と悪友が対応したりしていた。まぁ、これも言い方が良くないが、「男子を忌み嫌うグループ」というのは、当時の基準から考えて容姿が優れているわけでもなく、性格的にも男子が受け入れがたい部分があるという特徴を持っている。そのためかこの手の女子は男子から攻撃の対象になりやすく、また3倍返しで攻撃もしてくるのだ。
まぁ、現在の基準で考えると、職場などで女性が興味を示さないモノあるいは不快感を一方的に感じるような雑誌を広げているだけで「セクシャル・ハラスメント」と認定されてしまうことからすれば、「男子を忌み嫌うグループ」の中の特に先陣に立って男子に切り込んで来た女子なんかは、我ら男子の行動は立派な「セクシャル・ハラスメント」というジャンルに値したのであろう。
そして事件は、下校前ホームルームの時にやってきた。
「・・・と言う訳で、今日の連絡事項は以上だが、みんなの中から何かあるか?」
担任が発するお約束の言葉である。これが過ぎればダッシュで帰宅だ。
「ハイ!先生!」
早く終われーというみんなの願いがひとつになっていた沈黙を破る声が出た。誰だこんな時に発言しようとする女子は?とばかりにクラス中の視線が声の方向へ集中した。そしてその瞬間ある一部の人間は瞳孔と口が開き心臓の鼓動が思考能力の全てが一瞬にして凍り付いた状態になったことはいうまでもない。
「男子がイヤラシイ雑誌を読んでいて困ります!」
「なにぃ?(怒)」
クラス担任は瞬間湯沸かし器としても生徒から恐れられており、その行動は今やったら教師生命断たれて生徒が悪かろうが間違いなく新聞沙汰になるような暴力行為もバンバン日常茶飯事であった。その担任の顔がみるみる赤くなっていく。男子の心の中は「あのバカ女め」という怒りと「あわわ、最悪だ」というあきらめの気持ちが点滅していたことだろう。
「おぃ、お前ら。その雑誌を出せ!」
下校時であるために、雑誌は持ち主へ返っていた。そう、僕とひとりの悪友である。すごすごと鞄の中から「ボム!」と「週刊プレイボーイ」を取り出し担任へ渡した。雑誌を手にして内容をパラパラとチェックすると、紅潮した顔を更に倍赤くした教師が言いはなった。
「これを読んでいた奴手を挙げろ。お前ら全員理科室へ来い!」
僕と「ボム!」と「週刊プレイボーイ」を所持していた主犯格は既につるし上げられており、逃げることができなくなったと感じた悪友たちは芋づる式というか春の芽吹きというか、ぽつぽつと手を挙げてきた。ただし、クラスで1番優秀で後の生徒会長になった奴は、微妙とはいえ共犯にもかかわらず手を挙げなかった!しかし「あいつも見たじゃないか」と仲間を売るようなことをしなかった、エライ僕らであった。
10数人がホームルーム終了を待たずに理科室へ直行。教室から出るとき、チクった女子を共犯者全員がガン見を行ったのは間違いない。しかし彼女は顔を上げて鼻を高くいかにも勝ち誇った表情をしていた。絶対に忘れないぞ。その他の女子の反応であるが、「男子と一緒にワイワイするのが好き」なタイプは悲哀の表情を、「男子の行動を無視」なタイプはやはり無表情を、そして「男子を忌み嫌う」チクリ女子とその仲間はザマーミロ、彼女は正しいことをしただけよの表情をしていた。
数分後、廊下には下校する生徒の笑い声が響き渡る中、その日はもう使うことがなかったであろう理科室で、一列になって頭をうなだれて正座をするクラスのバカ男子10数人がいた。
長いので、つづく・・・
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