えー、続きです。
「お前ら。こんな雑誌を学校へ持ってきても読んでもイカン!」
30分ほど正座で反省した後に、説教をくどくど聞かされて、最終的に反省文を書くことになった。学校指定の原稿用紙に3枚だった。通常原稿用紙と言えば400字が相場であるが、800字という原稿用紙なのだ。2400字も何を書け何を反省しろというのか疑問に思いながらも、ヒーヒー書いて放免となった。
家に帰るのがイヤだった。既に父兄への報告を言い渡されていたし、これでさらに両親からも説教もらうのかと思ったら、このままバイクでも盗んで別の世界へ走り出したい気分であった。んなこと小心者だからできないが。
視界に家が入ってくればくるほど足に鉛の玉がくっついたように重くなっていた。しかし帰るしかないし、おなかも減った。意を決して家にはいると父親の姿が見えた。うなだれているために見えたと言っても表情まで見ることができない。いったいどんな形相をしているのか、考えただけで震えてくる。
「・・・ただいま」
「おかえり。まぁ、こっちに来て座れ」
もう反省はいいよぉ、怒られるのイヤだよぉ。という気持ちで一杯になっていたが、言われるままソファに座った。
「先生から連絡があったが、いったいどんな女の裸の雑誌だったんだ?」
「没収されたから手元に無いけど、僕がBOMB!って言うアイドル系雑誌で友達が週刊プレイボーイだよ」
「ふーん・・・」
父親の沈黙が痛い。怒鳴られるのはどのタイミングなのだろう。そう考えいたら父親が口火を切った。
「お前なー。そんな雑誌を見るんじゃないよ」
そら来た。あー、ここから説教が始まるのか。気分はどんどん暗くなる。父は続けて静かに話を続けた。
「そんな雑誌の下手な奴が撮ったヌード写真なんか見る価値ないぞ」
「・・・んへ?」
メダパニの呪文をかけられたように、僕は非常に混乱した。父はいったい何を言っているのだろうか。言葉の意味が理解できずに思わずうなだれていた頭を素早く上げて父の顔を見た。
「だから、そんな二流カメラマンの消費専用ヌード写真なんて見たってつまらんし、勉強にならん。そんな雑誌を見るぐらいなら、ここにある写真集を見なさい」
と父の指の先には、父が集めた写真集がたくさんあった。大竹省二、秋山庄太郎、中村正也、藤井秀樹、星野小麿、等どちらかと言えば広告写真の人であるがきっちり自分の世界を持って作品を作って発表している写真家達である。外国人であれば、デビット・ハミルトン、サム・ハスキンス、等ソフトフォーカスレンズを上手に扱う作家を父は好きだったようだった。
「いいか、そもそもヌード写真というのはだな・・・」
父から発せられた言葉に面食らって開いた口がそのまんまというか、要するに家へ入る前の恐れおののいていた気分はすっかりどこかへ飛んでいってしまった。まさか父からヌード写真の講義を小一時間ほど聴く展開になるとは予想だにしなかったからだ。
「・・・ということで、女の裸に興味を持つことはよいことだ。しかし写真を見るんなら神秘であり美しいものとして捉えている、ここにある作家の写真集を見なさい」
そしてすっかり気分転換され、おいしくごはんを食べることができたしぐっすり眠ることもできた。翌日学校へ行き悪友達へ家での状況聞いてみると、やはり家人からも怒られたようだった。我が親はやはりちょっと変わっているようだと改めて認識してみた。
さて、以降我が家では、堂々とリビングでヌード写真をまぢまぢと見る息子とそれを一緒になって見る父親という光景が解禁された。
そして僕は今回の出来事に対しての父の反応に感謝した。よくよく家の中を見渡せば、父の撮影したヌード作品を飾っていたこともあった。写真家としての父を尊敬するようになった。息子が親と同じ職業を目指そうとする、つまり進路と未来を決意することができたという良いきっかけだったのかもしれない
しかし、おかずにならないので雑誌は隠れて読むのであった(ー_ー;)
ということで写真集が与えた影響話は、おしまい。
追伸
僕らをチクった女は現在警察官である。ビバ!人生。
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