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カテゴリ:やまももの創作短編
幼い子どもたちはみんな将来の夢を持ったものです。スポーツが得意な元気な男の子たちの多くがプロ野球の選手に憧れたものです。 内川雅人くんですか。彼は手塚治虫のような漫画家に憧れました。いつも広告の白い後ろ紙に、鉄椀アトムに登場するひげオヤジやお茶の水博士たちをとても上手に描いていました。そんな彼の右手の中指にはペンだこ、おっと鉛筆だこがポッコリ出来たものです。 小学校の授業中も先生の話を聞くふりをして、彼は教科書の余白部分に手塚漫画のキャラクターを描いていたものです。とにかく手塚漫画のキャラクターを描かずにはおれなかったのです。 そんな手塚漫画を描くことが大好きな彼に、4才年上の従兄弟の威ちゃんがとても貴重なアドバイスをしてくれました。本当に漫画家の道を目指すなら手塚漫画にそっくりなものを描いていては駄目だよってね。威ちゃんがいいたかったことは、雅人くんならではのオリジナルな漫画が描けないと駄目だよという忠告でした。 それからです、雅人くんは漫画を描くことにスランプに陥ってしまいました。雅人くんなりの漫画を描くってどうすればいいのでしょうか。どうやっても描けません。雅人くんはこのとき漫画家になることをあきらめました。小学校五年生の頃に味わった挫折でした。しかし、勉強嫌いの雅人くんの右手中指には鉛筆だこがしっかりと残っていました。いや、いまも雅人くんの右手中指には鉛筆だこがあるんですよ。なにか悲哀を感じる右手中指の鉛筆だこです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年08月30日 20時27分25秒
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