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2009.09.10
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カテゴリ:書籍・雑誌
 昼四時霊厳島の出しねり物永代橋の東詰まで氏来りし時、橋上の往来駢てん群集の頃、真中より深川の方へよりたる所三間計りを踏み崩したり。次第に崩れて跡より来るものをいかんとする事ならず、いやが上に重なりて落ちかゝり水に溺る。助かりしは稀にて、川上の水屑となりしは凡そ千五百人余といふ。
 ― 斎藤月岑編 「武江年表」より

 文化4年(1807年)8月19日、江戸深川・富岡八幡宮の大祭に押し寄せた人々をのせて、永代橋が落ちた。老朽化していた永代橋は、12年ぶりの祭礼日に詰め掛けた群衆の重みに耐え切れず真中から激しい轟音を立てて崩落、一瞬にして千五百人を超える老若男女の命を奪った。

 この悪夢のような惨事を通して、事件に巻き込まれた江戸庶民の様々な悲喜劇、葛藤や哀歓の種々相を、鋭い人間洞察に裏打ちされた絶妙の筆致で描く連作八篇からなる杉本苑子さんの「永代橋崩落」を読んだ。
 犠牲にあわれた方達やその回りの人達、また、その場に居合わせて運良く助かった人達の様々なドラマに思いを馳せ、何ともしんみりとした気持ちになってしまったしょんぼり

 永代橋崩落の有名な話で、橋が落ちたことなど分からない後方の群集が闇雲に前へ前へと押し寄せるのを見て、これ以上犠牲者を増やしてはならぬと考えた南町奉行所同心・渡辺小兵衛が橋上で抜刀して振り回したというのがある。刀を見て慌てた群集がやっと後戻りしたたため、更なる犠牲を何とか食い止めることが出来たと言われている。
 そしてもう一つ、引き上げられた死体の懐から出てきた財布で身元が判明したものの、本人は生きていたという話。実は崩落事故直前にスリに財布を盗まれ、そのスリが事故にあって死んでしまったのだった。
 巻頭の「風ぐるま」はこの渡辺小兵衛をモデルにした話なので、永代橋崩落事件のあらましがまず頭に入るようになっているため、あとに続く物語もすんなりと読み進めていけた。但し一篇を除き、どの話も心に重い…。 

 この作品を読んで思い出すのは、永代橋の惨劇からおよそ200年後の2001年に起こった兵庫県明石市での花火大会歩道橋事故である。こちらも死傷者258人を出す大惨事で、同じような要因からなる群集事故だった。
 生粋の田舎モンのせいか私は人が多いところが苦手なので極力人ごみは避けるが、都会に暮らす方々はそうも言ってられないだろう。人が集まるところはふとしたきっかけで何が起こるか分からない、ということをどうかお忘れなく。

sky.jpg 秋晴の空の下、永代橋の惨劇は起こった





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Last updated  2009.09.11 01:53:53
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