カテゴリ:経営者のための連続コラム
冬の連続講座 値付けのポイント その15
より高い価格のよい商品を売る抜く仕掛け その2 ~日経レストラン 連載コラム2014年8月分より より高い価格に誘導する価格設定法とは? 例えば、パソコンのような高額商品を買う場合、いくつかのアイテム比較をして高いか安いか、あるいは高い価格であるが価値があるということを判断します。 ところが、おいしさという概念が個々人の主観や経験に依存するためか、飲食店におけるメニュー選びに際しては、食べ比べてから価値と価格のバランスを考えて注文すると言うよりは、提供された料理を食べた後に、自身の持っているおいしさの価値観や過去の体験と比較しておいしいかおいしくなかったかを評価する傾向があります。 そして、この評価は記憶して残り、その店のイメージを確定しますから厄介です。 この評価された記憶の積み重ねによりその人の食文化を形成して、無意識気に入ったメニューを選択する傾向が高くなります。 つまり、選ばれるメニューはその人にとって身近な限られた範囲にとどまります。 このような行動パターンにより、おいしさや価値のストライクゾーンを自然に広げることはあまりなく、おのおのの選択肢というテーブルにのる価値の範囲は極めて狭い状態を保つ傾向になるのです。 これが継続的に単価アップにつながらない原因と言えますが、単価アップをするにはこの価値の範囲を無意識に広げるそれなりのしかけが必要なのです。実は、パソコンの購買時にあるような“対比”をうまく使うことがその解決法となります。 なんとか単価の高い付加価値のあるメニューに誘導しようと、感情に訴えかけて無理やり衝動購買を促そうとしている店を散見します。実は私も十年以上前はそういうやりかたをおすすめしておりましたし、2002年にリリースした著書『飲食店儲かるメニューのつくり方』ではそうすべきだと書いてあります。 しかし、繁盛店と関わることが多くなり、そのような店を見ていると、無理やり高い商品に誘導しようという姿勢がないことに気づきました。さらには、お客様は繁盛していない店にはない光景――自然に高額商品――例えばよりよいワイン、よりよい材料――を自然に注文しているケースを目の当たりにしました。 そうして「なぜ高額商品を自然に注文するのか」がとても不思議に感じ、その答えを求めて何度となく同じ店での食事の回数を重ねました。 そして、気づいたのが“同時対比”というプロセスを活用した顧客教育だったのです。 このことに気づかせてくれたのが大阪の繁盛店『ポルチーニ』のオーナーで、かつてはリッツカールトン大阪の『ラベ』に在籍しておりました中谷信裕さんで、す。 中谷さんの店『タヴェルナ・ポルチーニ』で食事しているときに、「この料理にはどんな白(ワイン)があいますか?」と尋ねると二種類のイタリアワインとグラスをもってきて少しずつグラスに入れて「どうぞお試しを!」と何気なくサービスされました。 多くの店では、トークで「鉄板の組み合わせですが、牡蛎にはシャブリがあいます」「じゃあ、それで」というプロセスになりシャブリだけを飲むことになります。 したがって、シャブリが本当に合っているという微差を認識することはありません。 しかし、飲み比べて店合うワインをチョイスするというプロセスを加えれば、仮に一杯あたりの単価が高くても、合うのがこちらだと分かった以上、値段を気にせず注文するようになります。 『ポルチーニ』ではお客様に喜んでいただくことへの裁量権を各スタッフに与えております。 しかし、飲んでみて対比して、料理にあうワインを選ぶという顧客教育のプロセスがあることを発見したのです。 実は、自然に高額商品を注文して店として単価アップをはかるには、その人がいいものを納得して、食習慣には落とし込むプロセスが必要です。無理に感情に訴えてエモーショナルなコピーで一瞬売り抜いても、そのような働きかけは一過性のもので終わり、自然に単価元の状況に戻るでしょう。 最悪な場合、他の店にスイッチしまうことも事態があるかもしれません。そうなれば、一過性の価格誘導は、リピーターとして来店することに最大の旨みがある飲食店のメリットそのものを無くしてしまうリスクすらあります。 多くの人は、おいしいよりよい商品を継続して販売することはなかなか容易ではないと感じているかもしれません。そのため「ちょっと高いと売れない」と結論付ける料理人もいるでしょう。 ただ、これは高い価格づけをしたより上位のアイテムに誘導する価格設定法を知らないからと言えます。 続く 大久保一彦の本 【中古】 非常識に売れる最強メニューがだれでもつくれる成功方程式/大久保一彦(著者) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2024.02.01 06:32:02
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