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まろ0301

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2014.02.27
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カテゴリ:カテゴリ未分類

2月19日『「山月記」はなぜ国民教材となったのか』佐野幹 大修館書店 

2013年8月

 「山月記」を最初に目にしたのは、高校時代に受けた模試に出題されていたからだと記憶している。学校が終わるとすぐに書店に飛んで行って、旺文社文庫を買った。のちになると、「弟子」が私にとってのベストワンとなるのだけれど、「山月記」は、その硬質な文体に魅せられた。『唐詩選』なども読んでいたから、漢文の持っている無駄のない独特のリズムに惹かれていたのかなと思い出す。

 この本は、労作である。時代をいくつかの時期に区切り、その時代時代で「山月記」はどのように読まれてきたか、また教師が生徒にどのように読ませようとしてきたのかが辿られる。もちろん、学習指導要領の中でどのような目標を達成するための教材として位置付けられたかについても目配りが行われている。

 優れた実践の紹介も行われている。今から見れば、「ちょっとこれは・・・」と思えるような実践もあるが、それはそれとして時代の空気を感じることが出来る。

 私は社会科の教師なので、もっぱら文学作品を楽しむ世界で生きてきた。しかし、私が師と仰ぐ人の影響もあって、この本を読みながらしきりに、「文学とはなんなのか」という問いが頭から去らなくなり、「文学を教材として取り上げるためにはどういうことが必要なのか」、果ては不遜にも「私が国語の教師として『山月記』を取り上げるとしたら」などと妄想を廻らせるように迄なっている。

 文学は、ある一定の価値観を身につけさせるための道具では断じてない。仮に、人間の真実を韻文或いは散文の形で描こうとしたもの、と定義してみよう。その作品の中で作者が描こうとした人間の真実とは何か、そしてそれを生徒たちにどのように読み取らせるか。教師は自分が向かい合っている学習集団が、その作品を読み取れるまでに成長しているかを自分の実践の過程を振り返りながら見定めなければならない。

 と、ここまで考えを進めてきて、自分の授業の粗が目の前に浮かんでくる。少し立ち止まって考えねばならない。授業は今週末で終わり、定期考査、入試と続き、四月から新学期が始まる。上に書きつけたことはそのまま自分に還ってくる。同じことを繰り返さないために、考えねばならない。六十過ぎてこの体たらくである。

 

2月20日

『光秀の定理』垣根涼介 角川書店 2013年8月 図書室。

 明智光秀を取り上げた小説として、最も腑に落ちた。最後の新九郎と愚息との対話も面白い。NHKの番組で、信長の事を「サイコパス」と評していた心理学者がいた。人を人と思わない、自分にとって役に立つか立たないかという視点でしか人間を見ないというのがその論拠であった。 

 光秀を操り人形のごとく描く「本能寺の変」が多いが、やはりそれは違うと思う。その点で共感できたと思う。

 読み終えて、「こんな小説が読みたかったんだ」と改めて思った。歴史に「もし」は、無いのだけれど、光秀が政権を握った日本という国の行く末に私ははじめて興味を持った。事実としては、信長、秀吉、家康と続いていくのだけれど、私はこの三者よりもはるかに光秀の方が好きである。

 大河では、今年も性懲りもなく信長と秀吉を取り上げている。もう正直うんざりである。

 

2月21日

『民主主義のつくり方』宇野重規 筑摩書房 2013年10月 図書室

「プラグマティズム」という哲学について、認識を深める。出発点が「62万人もの死者を出した南北戦争への反省」であるという指摘は、納得。

 理念の正しさを実践によって検証するという考え方は確かに正しい。後半の「習慣の力」、「民主主義の種子」は、面白い。

 トクヴィル、ロールズを読んでみる必要がある。特にトクヴィル。

 

2月23日

『地図で読み解く日本の戦争』竹内正浩 ちくま新書 市立図書館 13年10月

 並みの「戦争本」よりはるかに参考になった。

 まず天下統一までの「国絵図」の作成と変遷が延べられる。そして、開国時のペリーの行動。第二章ではまず日本がなぜ精密な地図を必要としたのかが、「防備」という視点から述べられる。その頂点は西南戦争である。京都に事実上の大本営が出現した事、この時点で南九州の正確な地図を新政府が所有しておらず、急きょ作成したことは初めて知った。

 新政府が各地に密偵を放って「偵察録」を作成したという事は、新政府の立場を象徴している。政府は海岸測量をはじめ、防備をかためる。

 そして外国の地図を作ろうとする。測量関係者の死亡者の多さに驚く。

 また、各地に設立された要塞は軍事機密となり、地図化には制限がつけられる(産業発展のために、東京大阪近郊は例外)ることとなる。

 しかしなんといっても、太平洋戦争(第七章「大東亜戦争」と地図)における日米比較は圧巻。海軍は艦隊決戦のみに集中して島嶼の防衛策を講ぜず、アメリカの海兵隊のような組織を持っていなかった。陸海軍の間で情報は共有されず、占領していた地域の地図も不備。兵たちは、ほとんど役に立たない地図によって戦わざるを得なかった。

 「米軍は、情報と兵站(補給・輸送)に目処がつかない限り作戦を発動しなかった」(p258)という指摘は、「日本の敗因」を一言で表している。そして、戦死者の三分の二が餓死であったという事実のメダルの裏をなしている。

 「精巧な模型を作製して将兵に攻撃目標を理解させるこの手法は、前述した硫黄島作戦や関東の空襲でも使われた。アメリカ本国の映画スタジオには厖大に偵察写真を元に二万分の一程度の縮尺で関東一円の巨大な精密立体模型が完備しており、クレーンに設置した映画用カメラで実際の飛行経路に従って撮影した特撮映像をB29の搭乗員に事前に見せていたのである」(p262)

 「日米戦争こうすれば勝てた」などという題名の本があるが、この本を読むと、そんな本がおとぎ話に見えてくる。

 

2月26日

『対論!日本と中国の領土問題』横山宏章 王雲海 集英社新書 13年1月

 意識して冷静に話すという事がこれほどの成果を生むという見本のような本。

 「日本の政治家が中国から信頼されていれば往々にして国内の民衆から親中派として反感を持たれてしまう。同じように中国の政治家が日本から信頼されていると、中国の国内世論からは売国者と言われてしまう。つまり、解決できる人物は一方では相手国から信頼され、他方では自国民からも納得されるという二つのとても揃えにくい条件を兼ね備える必要が出てきます」(p215)の王氏の発言が、横山、王両氏の立ち位置を示している。

 孫文は民主主義者ではなかったという指摘。手塚さんの『一輝まんだら』における孫文の描き方を思い出す。

 「日本が中国に何をしたのか」「敗戦後の日本に中国が何をしてくれたのか」を忘却することは日中両国にとっていいことではない。それは、中国の言い分をすべて認めよ、という事ではない。

 ただ、アメリカが何をしたか、ソ連が何をしたかと比べて中国が日本にしてくれたことはあの時点では驚異的と言っていいことであった。それは頭の片隅に置いておくことだ。

 「民意」というものと、「ポピュリズム」。

 「政治家は何をせねばならないか」「マスコミ人はどんな役割を果たすべきか」等々。

 人民解放軍は、国軍ではない。中国共産党に忠誠を誓う軍事組織である。

 

2月27日

『作家的時評集』高村薫 毎日新聞社 2013年11月

 暗い本である。政治批判と高村氏も含めた日本人への批判に満ち満ちている。

 氏は、「日本人はなぜこんなに従順なのか」「日本人はなぜ我慢し続け、結果として政治家に危機感を失わせている」と説いている。

 氏は希望を語る。若者と日本人の創造性である。しかし、利益集団の強力さ、既得権益に絡め取られる人たちの多さ、私たちの政治への無関心、「何とかなる」という全く根拠のない「慢心」への怒りははるかにそれを上回る。そして、結果として、どのページからも怒りと失望があふれてくることになる。

 ただ、立ち止まって考えたとき、いまの日本でへらへら笑って生活してられるという方がほんとうはおかしいのではないか。

 大阪駅周辺に林立する巨大百貨店、さらにグランフロント大阪。

 「グランフロント大阪の一カ月の来場者数が761万人に達する一方、一人あたりの客単価は千円に大きく届かない」(p342)

 「満を持して東京から進出した百貨店も、大阪の消費者が初めに肌合いが違うと感じた通り売り上げが伸びていない」(p342)

 伊勢丹の事なのだが、ついに、テレビでも伊勢丹は取り上げられることもなくなっている。「再開発のためのマーケティングはどうなっているのだろうか」と著者は疑問を呈しているが、結果が大失敗なのである。「ビッグデータ」とか「マーケットリサーチ」の言葉は踊るが、現実の惨状を見れば、「この再開発を担当し、伊勢丹に出店を進めた人物及び伊勢丹の首脳は無能である」という冷厳な事実しか残らない。

 どこまでこんな無駄をし続けるのだろうか?

 著者は、生活から福祉に渡る事柄についての「見直し」を幾度となくこの本で提起している。

 自公政権、民主政権、そして自公政権の復活、「維新の会」への言及、福島の現状への言及。

 ホントに怒らない方がどうかしているのだ。

 






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Last updated  2014.02.27 21:46:04
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