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『父と娘の法入門』は、対話形式で書かれている。 のっけから、「日本の高校や中学では、憲法の話はともかく、『法』の考え方を教えるってことをしていない」(p12)と指摘されると、私に限って言えば、「そのとおりでございます」と言わざるを得ない。 まず、「犬の登録」がなぜ必要かということがテーマとなる。関連して「狂犬病予防法」という法律が提示される。 そして、「人間の登録」。戸籍のこと。戸籍を取得することによって社会のメンバーとして承認されるということ。里親と養親の違い、と進んでいく。 「親子であること」(第三夜)には、ちょっとドキッとするようなことが書いてある。それは、「親子の条件」の部分。「母親と子どもの間の親子関係は簡単で、子どもを産んだという事実だけで親子関係は決まる」(p63) 問題は、父親の場合。対話の部分を引用する。 娘 生まれたときにDNA鑑定をしておけば、だれが父親かなんて問題にならないじゃない。その方がいいと思うけれど。 父 血がつながっていない限り、実の親子ではありえないという考え方をとるなら、そうしたほうがいいけどね。 娘 えっ、血がつながっていなくても、実の親子ってありなの? 父 ありだろうね。すべての子について生物学的な親子関係を明らかにするというのは、親の性関係を明らかにするという意味をもつだろう。わざわざそんな事をしないで、自分の子どもだと考えて子どもを引き受けて育てようという者を父親にすればいいとも考えられる。 娘 母は産んだ人、父は手をあげた人? 父 おおまかにいえばそういうこと。 娘 じゃ、パパは手をあげたわけ? 父 パパとママは結婚しているからね。結婚するってことは、ママが産む子の父親になるって産まれる前から手をあげるってことだと言える。だから、結婚していれば、いちいち手を上げなくても父親が決まるんだ。でも、結婚していなければ、手を上げる必要がある。「認知」といって、自分の子ですという届け出をするんだ。(p64~5) ホントにいろんなことを考えた。 民法三条(権利能力) (1) 私権の享有は、出生に始まる。 (2) 外国人は、法令又は条約の規定により、禁止される場合を除き,私権を享有する。 父は、「これがすごいと思えないと、法学部で勉強したとは言えないね」(p77)という。それは、「人間はみんな『物』じゃなくて、自分で財産をもち、管理したり処分したりできる」ようになったのが、歴史的な産物であるということだからである。奴隷は「物」として扱われた。日本の場合、女性が財産をもち、管理したり処分できなかった時代があったことを忘れてはならない。 「人格権を守り、財産権を守るのが民法」(p93)という言葉も、なるほどと腑に落ちた。 第八夜では、「不法侵入」という概念が出てくる。「宅地の庭に入ったら不法侵入」だと言えそうだが、その庭自体がどのくらいの広さによるかで、不法侵入になるかならないかの見解が分かれているようだ。 他に、児童虐待の問題については、条文が引用されている。 法律の条文というのは、確かに独特の言い回しで記されている。それは、厳密さを重視するところからきており、他の法律、特に憲法との整合性が重視されているからなのだろう。 さて、次は、『法とは何か』に進みたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.01.05 21:17:09
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