終戦直後の日本をゴジラが襲う。実際にはそんな事実はなかったわけなので、一種の架空世界の物語である。ゴジラにより空襲による破壊を免れた銀座の街は壊滅し、海軍の生き残り達がそれに立ち向かっていく。ゴジラは一種の破壊神で、災害の暗喩という見方もできる。それは、原爆のようでもあり、震災のようでもあり、いつかやってくるであろう首都直下地震のようでもある。なお、日本では人災である空襲も災害のようにとらえられている。
それに対する元海軍軍人の中心は技術士官であり、ゴジラ撃退のために作戦を練っていく様子は、プロジェクトXを連想させる。戦争はまず高等教育を受けていない若者から動員され、そして学徒出陣も法文系の学生から行われた。軍隊でも技術系の人間は比較的安全なところにいた。そうして生き残った技術系の人材はどっかで戦場で死んだ同世代の者に対する負い目のようなものがあったかもしれないし、無謀な戦争を行った国家というものに対する不信感もあったであろう。戦後の復興はこうした技術系の人材なしではありえなかった。航空機や武器を作る技術は自動車や他の製品開発にも生かすことができたし、そうした優れた製品が日本に繁栄をもたらした。ゴジラが海に沈んでいく最後の場面は、終戦直後の荒廃や飢餓を克服していったことに重なる…こんな見方は考え過ぎだろうか。
なお、俳優の吉岡秀隆氏は昔「半落ち」という映画をみたときには下手な俳優(もちろん主観)という印象をもっていたのだが、この映画では非常に上手いという印象しかない。そういえば映画「Winny」でも脇役ながらよい演技をしていたのを思い出した。