(「野球と其害毒」東京朝日新聞より) の続き。
■1911年(明治44年)8月29日から連載を開始した「野球と其害毒」。その第7回目(9月4日)は永井東京高等師範教授談。見出しは「運動の本旨を没却せる日本野球」。永井氏曰く、
私は日本現在の野球について幾多の異議がある。総じて運動の目的は体力の養成にあらねばならぬ。すなわち青年学生を疲労せしめてはならぬのだが、現在の状態では野球は面白いから学生が耽りやすく、したがって大切な時間を空費し身体を疲労衰弱せしめるまでに至っている。野球選手が学科のできぬのはこの理由からである。
精神上から言っても昨今日本の野球はあまりに勝負に重きを置きすぎているから種々の弊害がある。対手を怒らすような拍手や野次りかたをしたり、悪口をいったり、対手の行動を妨害するような卑劣な行為が選手によって行われている。
生徒が憫然だ。日本の野球は私の実際に見たところ、または報告記事等を総合して考えるといかにも米国西部の堕落したる野球に似ている(※)。日本人の直に熱狂すれば前後を忘却する欠点が日本の野球によく現れている。古来武士は堪忍を重んじて容易に刀を抜かぬことを誇りとしていた位だが、今日の日本の野球界の状態を見ると選手に堅忍持久の気なく、気が早く勝負に重きをおいてコセつき野次が下品である。
また氏は、野球の試合に入場料を徴収していることにも言及している。
米国大学でも試合の時に入場料をとる。しかし米国の法律にこれを興業とは見ておらぬが、日本の法律では明かに興業であって、日本人として考えれば学生が入場料をとることは大なる教育上の問題だ。野球をある利益の手段に利用する学校の如きに至っては論外で、犠牲にさるる学生はただ一言憫然だと言いたい。
※永井氏は、米国では特に東部になるほど学生野球の風儀がよく、西部には堕落した傾向にあると指摘している。氏の説によると、当時慶應義塾大と交流の深かった(西部にある)ウイスコン大は商売人化しており、中部にあるシカゴ大はウイスコン大より上品であると言っている。
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