先日、文字(MOJI)アーティスト・浦上秀樹さんのお話を聞く機会がありました。
■浦上さんは、現在40歳。大学生の時に筋肉が徐々に減少していく進行性の難病『遠位型(えんいがた)ミオパチー』を発症し、23歳からは車イスが必要な生活となりました。「なんで俺だけが?」「今までできたことができなくなる!」といったネガティブな思いが、頭の中を駆け巡ったそうです。将来の自分を想像できない不安、恐怖感。
■しかしそんなある日、浦上さんは気づきます。
「今を楽しもう。先のことはどうであれ、今を楽しもう。できなくなったら、その時考えよう」。そしてその日から、楽しいことを考え、自分のなりたい姿、やりたいことを思い描き、自分から積極的に行動するよう心がけた・・・(『ひと文字のキセキ』浦上秀樹著、PHP研究所)。
「今を楽しむ」と「自分のなりたい姿を思い描く」。
筋肉が徐々に減少する進行性の病気ゆえ、未来を想像することは相当な苦痛を伴うに違いありません。だから、今を、今こそを楽しもう!と。ところが、そうではあっても、自身の未来をポジティブに考えていこうと浦上さんは決意しました。両者は一見矛盾して見えますが、そこに浦上さん独特の強さが垣間見えます。
■そして始めたのが、文字(MOJI)で「こころ」を伝える作品を手掛けること。
基本一文字の漢字を毛筆で書くことで、その文字に「こころ」を込めること。前出の著書には、こんな記述がありました。
「人の心は決して強靭ではないはず。幸、不幸を決めるのは運命や環境ではなく、自分自身のこころのあり方にある」。
下の写真『歩』は(なしとげる)と読みます。
この文字には、こんな「こころ」が込められています。
「止まることが少ないと書いて歩。
一歩一歩、ゆっくりと着実に前に進んで行けば
必ずゴールが見えてくる」
※読み方について補足しますね。
「止」という文字をよく見ると、ひらがなの「な・し・と」が隠れていることがわかると思います。また下の「歩」という文字には、ひらがなの「げ・る」が見えます。つまり「歩」と書いて(なしとげる)と読む。
■浦上さんは現在、自由が利くのは首から上部です。そのため筆を口にくわえて作品を描きます。まるで手を使っているように、器用に筆を進めます。しかし出来上がった作品は、そういった障害のことなど関係ありません。感性をフル回転させて描く文字には、人に伝えたい「こころ」のあり方が隅々にまで込められているように思います。
相田みつをさんの作品も好きですが、それとは「こころ」の違う部分が震えます。実に感動しました(^^♪
※浦上秀樹さんの著書『ひと文字のキセキ』をもっと知りたい方は、こちらへ。
http://shuchi.php.co.jp/article/1652
![歩.JPG](https://thumbnail.image.shashinkan.rakuten.co.jp/shashinkan-core/showPhoto/?pkey=aa9594be369cdd44c75c9caa7d1efccbb0b567ad.24.2.2.2j1.jpg)
(写真)『歩』と書いて(なしとげる)と読む。
![夢.JPG](https://thumbnail.image.shashinkan.rakuten.co.jp/shashinkan-core/showPhoto/?pkey=0faa95d526c129cf22020f9388d06a328f464ef6.24.2.2.2j1.jpg)
(写真)浦上さんのオリジナル・ポストカードより。