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カテゴリ:書評
オーディオブックでこの本を聞きました。この本に限ったことではないですが、書籍により抱く思い、それが共感であれ、反発であれ、それこそがまさにその書籍に触れた価値なのだと思います。読んで(聴いて)よかった本だと心から思います。 (あらすじ) 【ジェフ・ベゾスは、このヤバい日本人の「部下」だった】 かつて日本には、「起業の天才」がいた。 リクルート創業者、江副浩正。 インターネット時代を予見、日本型経営を叩き潰し、 自分では気が付いていない才能を目覚めさせた社員のモチベーションを武器に 彼がつくろうとしたのは、「グーグルのような会社」だった。 だが彼の名は「起業の天才」ではなく、 戦後最大の企業犯罪「リクルート事件の主犯」として人々に記憶される。 「ベンチャー不毛の地」となった日本に必要な「起業家の資質」とは何か。 リクルート事件の大打撃を乗り越え1兆8000億円の負債を自力で完済、 株式時価総額で国内10位にまで成長した「奇跡の会社」はどのようにつくられたのか。 苦境に立ち逆風に向かうすべての日本人に贈る、 歴史から葬られた「起業の天才」の真の姿。 https://books.rakuten.co.jp/rb/16541992/?scid=af_pc_etc&sc2id=af_101_0_0 あまり公平な書籍とは言えず、全体を貫く論調は今なお蔓延る日本的な経営への批判、そして組織の中でのスタンドプレーを必ずしもヨシとしない日本的職場への批判、その反面としてリクルートとその創業者、江副浩正への賛辞である。江副が事業の拡大後には私人として破綻していた点や、政財界との関係づくりに腐心するような既得権益側へと変質してしまった点への批判的描写など意識して取り入れているものの、おそらく著者がこの書籍で試みたのは江副リクルートの再評価であり、それがため、その功績と呼べる部分にいささか強く光を当てすぎたのではないかと思われる。また、リクルート事件以降の描写はいささかくどく、長さを感じた。大事な部分ではあるもののエピローグの様相が強く、読み手としては飽きを感じる。もう少しコンパクトにまとめても良かったのではないか。 実は個人的にリクルートの提供するサービスへはあまり親しみを持てなかったりする。どこか胡散臭い、なんだか怪しい、何をしている会社なのかがよくわからない。令和の今になってもおそらくは少なくない人々にそんな思いを抱かせるリクルートなる会社が、そもそもなぜそのような思いを多くの人々に抱かせるのか。その回答はこの書籍の中にあると言って良いと思う。少なくとも僕は納得が行った。なるほど確かに胡散臭い。だが、今、これからの時代に起業していくのだとしたら、このぐらいの熱量、当事者意識がなければ難しかろうし、そんな思いが高まれば、胡散臭いほどになりふり構わなくもなっていくのだろう。 そんな胡散臭いリクルートは8兆円もの時価総額を有するスーパー大企業である。そのスーパー大企業は、多くの人の知るところであるが会社員という経験をしないまま社長になった一人の男が作り上げた。起業をはじめとした事業の経営に深く関わる人であればあるほどにそこに浪漫と、憧れと、ほんの少しの不快感を覚えることだろう。その不快感に対する答えこそが、その人それぞれの事業の、ちょっとしたヒントとなるのだと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.11 15:36:42
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