HOT HIPPO ― あつがりカバ
「あつくなりましたねー。今日は英語の絵本を持ってきました」金曜日の朝は、小学校のどこかの教室で朝からテンション上げてご挨拶。"Good morning!"前夜どんなに遅くて寝不足でも、子ども達の前で疲れた顔はできない。"I'm fine, too, thank you!"と返さなくちゃ。1時間目が始まる前の朝一番15分間を担当するボランティアとして、ALT(ガイジン講師)が来校した時にやった授業の簡単な復習をしたり、英語に親しめるような絵本を読んだりする。この日は1年2組。「みんな、カバって英語でなんて言うか知ってる? そうそう誰か言ってるね。ヒポポタマスじゃなくて、hippopotamusね。長ったらしいからhippoでいいです。ちょっと言ってみようか、HIPPO!」今日は、うちにあったカバのお話の絵本を持ってきました。これは、今はもう高校生になった、うちのお兄ちゃんが3歳のお誕生日にもらったものです。そのころ、日本じゃなくて、スイスという国のジュネーブという町に住んでいました。ジュネーブにはいろんな国の人が住んでいて、ケニア人のおばさんとお友達になりました。そのおばさんがお誕生日のプレゼントにアフリカのケニアのお話の絵本をくれたんです。英語で書いてあるから日本語に直して読んだら、うちのお兄ちゃんはこのお話を気に入って、小さい頃何度も読みました。それで、今だにこの本をとってあったんです。みんな動物園でカバが大きな口を開けているのを見たことがあるよね。(見たことある人、と前で手をあげると、あるある!とかハイッハイッ!とか言いながらバーっと手があがる。低学年らしい反応にこっちも調子づく)カバはなんで口を大きく開けるんでしょうか? というのがこのケニアのお話です。じゃ、ちょっとクイズです。(こどもはクイズが好き♪)カバはなぜ大きく口を開けるのでしょうか? 次の3つのうちどれでしょう?1.あついから(ここでほとんどの子が手をあげる)2.口がくさいから(えーっ?と笑いながら敢えてこれを選ぶ子もいる)3.口の中を見せたいから(ここは最初はゼロ票)さあ、このお話では何と言ってるでしょう? 今日は英語で読んでみるけど、○○先生が日本語を言ってくださるので安心してください。でも、最初から日本語ばっかり聞いてしまわないで、英語を聴きながら、何て言ってるのかなあ? たぶんこういうことかなあって想像してみてね。絵を見るとわかるかもしれません。勘が大事です。で、日本語が出てきたら、だいたい合ってたなーとか確かめてください。・・・というわけで、この絵本を小学校で読むのも3年目である。 10年以上も経ってから、"HOT HIPPO"をこういう場面で読むとは思いもしなかった。夫の海外転勤のため仕事を辞めてついて行き、1歳の息子を連れて不安だった私に、とてもよくしてくれたあのケニア人のエルヴィラはアメリカ人のご主人と一緒に今はケニアに住んでいるはずだが、元気でいるだろうか?このボランティアがきっかけでちょっと英語を勉強し直したことが、今の仕事につながったということもあって、ボランティアのほうも大切に思えて少なくとも末っ子が卒業するまでは続けようと、4年目に入ったわけである。初めての時はすごく緊張したが、今は前振りトークもすっかり慣れてしまった。担任とのコラボも結構楽しい。重要な場面で、ケニアの万物の神様であるNgai(ンガイ様)が出てくるのだが、「先生、ンガイ様の台詞だけ英語を言っていただくか、日本語訳を朗読していただくか、どっちがいいですか? 私が全部読んでしまったらつまんないですから」と提案してみたら、1,2年生各2クラスで4人いる担任のうち、3人の先生はンガイ様の役の台詞の英語を特訓して、迫力のある神様を熱演してくれたし、もう一人の先生は、今日、しっとりした日本語の朗読を聞かせてくれた。やっぱり小学校の先生はなかなか芸達者である。小学校で英語を教えることについては、いろいろ言われているが、実際の現場をどれだけ知って言ってるんだろうか?と思う意見も多い。少なくとも子ども達は好奇心旺盛だし英語の絵本の読み聞かせは大好きだ。かんたんな絵本とは言え、英語だけで理解しろというのはちょっと無理だが、日本語のフォロー付きで楽しめたらじゅうぶんだと思う。もちろん、それで英語ができるようになるとは思わないが、何度も出てくるような英単語が一つでも耳に残ればいいのだ。この話だったら、hippoとか、雷のように轟くンガイさまのAha!という台詞とか。じーっと絵を見つめて聴いてくれているのは嬉しい。耳を傾けているうちにちょっとわかった気がするらしい。現代音楽みたいなもんかな♪そして、何でも大きな声で真似して発音してくれる。天真爛漫な年齢だ。そういう年齢ならではの外国語の刺激は悪くないんじゃないかと私は思う。別にそれで国語がおろそかになったりはしないだろう。重要なのは、世界には日本語以外の言葉もいろいろあって、違う言葉を話して暮らしている様々な国があり人々がいるということをなるべく幼い頃から知ることだと思う。そして、そういう人たちと友達になってみたいな。。と思ったらきっとその言葉が少しずつわかるようになるのだ。言葉はコミュニケーションのためにある。コミュニケーションはサバイバルのためにする。日本語だってそうだ。ということが実感できたら、それこそ国語のためにも役に立つんじゃないかな。************日本語訳も出てて、そのタイトルは「あつがりカバ」となっています。訳者の草山万兎?というのは、なんと河合雅雄さんのことでした!なんだかうれしいです。