「新六の桜餅」2020.03.18放送分
( 墨絵:朝野家社長 朝野 泰昌 ) 桜の季節になると食べたくなるもの。甘党の方にとっては、桜餅もその一つでしょう。花の香を 若葉にこめて かぐはしき 桜の餅 家づとにせよ(はなのかを わかばにこめて かぐわしき さくらのもちい いえづとにせよ)「家づと」というのは、わが家に持ち帰る手みやげのこと。花の香りを若葉に込めた、かぐわしい桜餅を愛した正岡子規(まさおか・しき)の歌です。この歌に詠まれたのは、小麦粉の薄い皮で餡を包み、塩漬けの桜の葉を巻いた関東風の桜餅で、長命寺(ちょうめいじ)とも呼ばれています。江戸時代、向島(むこうじま)の長命寺というお寺で門番をしていた青年が、関東風の桜餅をはじめて作ったことに由来する呼び名だそうです。青年の名は、山本新六(やまもと・しんろく)。 向島は、江戸時代から桜の名所で、春になるとお花見の人々で賑わっていました。花が散って、葉っぱが落ちる季節になると、掃除をするのも門番である新六の仕事です。毎年、毎年、落ち葉掃除に手を焼いていた新六は、桜の葉を何かに利用できないかと考えました。そこで思いついたのは、若葉を塩漬けにすること。薄い皮で餡を包み、塩漬けの葉を巻いて桜の香りを移したものを、長命寺の門前で売りはじめたところ、たちまち評判を呼んで江戸のヒット商品に。三百年経った今も、愛され続けている新六の桜餅は、日本の春を彩る風物詩になっています。*『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞・大阪日日新聞に掲載されます。 また朝野家ホームページ「朝野家・香りの散歩道」のバナーからもお聞きいただけます。