秋庭市のはずれもはずれ、ススキばかりがおいしげる斜面のど真ん中にたつ秋庭市立秋葉図書館、そこが文子の仕事場だ。無類の本好きである先輩司書の能瀬や日野らと、日がな一日あくびをしながらお客さんの少ない図書館で働いている。ところがある日を境に、職員の目を盗んで閉館後の図書館に居残ろうとする少年たちが次々現われた。いったい何を狙っているのか。(第一話 霜降―花薄、光る。)?のどかな図書館を優しく彩る、季節の移り変わりとささやかな謎。『千年の黙 異本源氏物語』で第十三回鮎川哲也賞を受賞した期待の新鋭が放つ、本好き、図書館好きに捧げる受賞第一作。
森谷明子さんの「れんげ野原のまんなかで」を読みました。
先程、感想を書いた「館島」と同じく東京創元社の「ミステリ・フロンティア作品で利用者が少ない図書館を舞台とした日常の謎を扱った連作短編集です。
図書館を舞台にしたミステリというと法月綸太郎さんの短編集に収録された作品を思い出しましたが、そちらは本に関する謎を扱った場合が多いのに対し、この作品では図書館を利用する人についてのささやかな謎が多いです。
連作作品らしく短編を追う毎に徐々に常連さんが増えたり、れんげ畑が話題になっていったりと自身も図書館に通っている様な気分になりましたw
特に秀逸だったのは、粗筋にもある1話目の「霜降―花薄、光る。」で真相はミステリとしてもお気にいりな内容でした。
各章は「霜降―花薄、光る。」「冬至―銀杏黄葉」「立春―雛支度」「二月尽―名残の雪」「清明―れんげ、咲く」と、どれも綺麗なタイトルが付いており、作中で描かれる四季の移り変わりも非常に美しく描かれていると思います。
若干残念だったのは、登場人物の描写が浅めで主人公や探偵役を始め、全体的に画一的な印象がありました。
それでも初めて読んだ作家さんとしては悪い印象はなく、また別の作品を読んでみようと思える作品でしたし、図書館好きの方にはお薦めですね♪
図書館繋がりではないですが、最近出たばかりの有川浩さんの「図書館戦争」を古本で入手したので読んでみようと思います。
今作とは、かなり毛色の違う作品ですがw