「ありがとう、秀樹!わたくしとお姉様は、あなたのことを決して忘れませんわ」―謎のウイルスにより人類が死滅した世界で、ひとりの百合少女の野望を謳いあげる表題作、前代未聞のファーストコンタクト「地球娘による地球外クッキング」、1979年を舞台にした不条理青春グラフィティ「エロチカ79」ほか、悩める人類に大いなる福音を授ける、愛と笑いとエロスの全8篇。日本SF大賞ノミネートの代表作、待望の文庫化。
西澤保彦さんの「森奈津子」シリーズを読んで以来、妙に興味があった森奈津子さんの「西城秀樹のおかげです」を読みました。
聞きしに勝ると言うか、これを読むと西澤作品が誇張でも何でもない事が分かると同時に、一応はミステリとして成立している「森奈津子」シリーズよりも更に奇天烈な世界観が溢れる8編からなる短編集になっておりますw
久々に小説を読んでいて声を出して笑ってしまいましたよw
短編に共通するのは当然の様に登場するレズをメインとした下ネタというのが凄過ぎですw
そんな中にSF的な要素を絡めているのですが、まともなSFになる筈がなくユーモア溢れ過ぎる設定やコミカルな会話が馬鹿馬鹿しさの濃度を濃くしております。
それなりにSFになっているのも面白いですが、純粋なSFファンはどう感じるのかが非常に興味深いですねw
以下、特に面白かった短編の感想です。
「西城秀樹のおかげです」
表題作からして、ぶっ飛び過ぎですw
ほとんどの人類が死滅した後の世界を描いていますが、こんな終末は絶対に嫌ですねw
タイトルの意味も突っ込み所も満載ですが、それに輪を掛けてオチも合っていると思います。
「哀愁の女主人、情熱の女奴隷」
これまた凄いタイトルですが、今作で最もお気に入りの短編だったりしますw
とにかくアンドロイドのハンナと極めて普通人の時子のボケとツッコミが面白過ぎですww
下ネタを最大限に活用した馬鹿馬鹿しい会話のセンスは絶妙ですね。
「天国発ゴミ箱行き」
こちらは死後の世界で来世の人生を3人の作家のある場面を観て選ぶという趣向ですが、その中にいる「森奈津子」の徹底した自虐ネタが素晴らしいですww
どこまで真実かは兎も角、ここまで思い切った描写を出来るのは生半ではないですよw
「地球娘による地球外クッキング」
SFオタク、レズ、変態味覚の凄い取り合わせの女性3人組が共同生活する所にUFOが墜落して来るという非常にSFらしい冒頭ですが、内容は無茶苦茶過ぎですw
お互いの趣向全開の言動の面白さが際立っており「哀愁~」と甲乙付け難い爆笑もののお気に入り短編ですね。
ここまで極端な性欲と食欲を表現した作品も珍しいと思いますw
「エロチカ79」
繰り返しはギャグの基本を地で行っていますw
1979年という時代設定に「後生ですから」という台詞が妙に合いますが、この馬鹿馬鹿しさは只事ではないですよw
何だかんだで非常に楽しませて貰った短編ばかりでしたw
馬鹿馬鹿しいとしか言えない作品ですが、かなりの笑いを備えている事に間違いは無いです。
中々、薦め難いですが、とにかく笑いたい時に手に取ると良いかも知れないですねw
それにしても、この作品がハヤカワ文庫から出ているのも凄いですねw