三流シェフ
著者の三國さんは以前から知っていた。もう、40年近く前、注目のシェフでテレビのドキュメンタリーで見て印象深かった人。自分の店の厨房で部下に激しく怒鳴りつけていた人。有名な天才シェフらしい。北海道の漁村出身で実家で物静かなお母さんもテレビに出ていた。後半で婚約者も出ていた。裕福そうな父親と一緒にいて、化粧の濃い、取り澄ました鼻持ちならないお嬢さん。そんな印象。それが数年前、テレビで三國さんの店を紹介している時にその店のマダムとして出てきた奥様。たしかにあの時のお嬢さん。しかし、薄化粧で黒っぽいワンピースの地味な姿で店のことを静かに話す様は、優秀なレストランのマダムそのもの。三國さん、レストランの片腕として良い伴侶を見つけられたんだ。そういえば、厨房での様子、前みたいに怒鳴り付けてる場面は無かった。以前、部下に対する暴力事件でのニュースも見た。部下を怒鳴り付ける様子をテレビで見ていたので、昔と違って、価値観が変わってきた若い部下は訴える人もいるだろうなと思っていた。彼は一言で言えば天才。延々と続く洗い場の作業も、その先の料理ができるようになるための最初のステップと見据えて嬉々としてこなしていた。それにコミュニケーション能力があったので頂点に行けたのだと思う。修行時代でも理不尽なことを言われれば、けんかも厭わず、しかしすぐ友達も作れる。上司にも可愛いがられる。言うべきことはしっかりと伝え、シェフになるという強い意思と楽天的で人好きな性格。新しい店舗を見つけるまでの間、三國さんに付いていくと言った部下数人が日雇いで凌ぎながら、待っていたこと。暴力に堪えきれず裁判を起こす人もいれば彼を信じて付いてきてくれる人もいる。暴力の件は「悪魔になってしまった」と記されていた。三國さんは結婚の経緯とかは書かれてなかったが、それも知りたかった。フランス修行から帰国した時、高給をもらってた筈がほとんど持金はなかったとのこと。貯金ができない人のようなので、奥様はしっかりした人に見えるので、今は大丈夫でしょう。