長い無沙汰のあとだって 小林酒造は心地よい
「北の錦 新酒を楽しむ忘年会」、
平成26年12月20日(土)北海道夕張郡栗山町・小林酒造にて。
予定表にピシッと「15時00分~蔵見学プレミアムツアー」と書かれていたそれは、
南杜氏の語り口に癒されつつ、「つまみ食い」ならぬ「つまみ飲み」は興味深く。
洗米作業中の蔵人さん、
酒米の吸水具合を見極め「今だ!」と腹を決めエイッと脱水機へ。
水を孕んだ酒米の重さはいかばかりか、
見ているだけで腰が痛くなりそうな。
小林酒造では「米が水をどれだけ吸ったか」の前に、
「(吸水前の)米の水分量」にも注意をはらっているそうです。
風土やお天気や保管状況や仕込み時期や、
きっとひと風ひと雨で違ってくる繊細な事がらなのでしょう。
ポカポカと暖かい麹室では蒸されたお米と麹菌が
ミニオンのようにせっせと働いておりました。
シバレルこの時期、確か気温が30度以上もある麹室にずっと居たいと思ったけど、
数日のうちに私にはきっと有毒で極彩色のカビがはえはじめ、
酒造りに多大なご迷惑をかけるに違いないと想像できたので諦めました。
今年は常より余裕をもって仕込み期間を長く、一度に仕込む量も少なく、
小さ目のタンクで日にちを変えて幾つか仕込んでみたりと、
実験的で繊細で楽しみな挑戦をされているそうです。
こちら↑はまだ"粥状"でしたが、この段階でもうタンクごと風味が違います。
もうすぐ"売ってるお店にしか売ってない"「冬花火(純米大吟醸)」になるらしい醪(もろみ)は、
ごくごく極上の飲んだこともない乳酸飲料を彷彿とさせる味わい(?)でございました。
倉庫を見上げたときや古い煉瓦に触れたとき
「永遠」なんてないと分かっていても「消えずにいてほしい」と思ってしまう。
柱↑に「日本高圧ヒューム管」の文字、
酒造りの他にもいろいろな事業をされていた(いる)名残り。
(参考まで:「レンガ積み職人が遺した建造物 ~ 北海道編 (I)」)
使われていない倉庫の中から古い酒造りの道具たちが偶然見つかり、
小林専務がfacebookで「里親(引き取り先)を」と呼びかけたら
日本中から引き合いがきてあっという間に運び出されきれいに片付いたそう。
万が一にも倉庫が崩壊し酒道具が下敷きになるなどして使えなくなる前に
役立つ場所が見つけられ託せてよかったとホッとした表情で話してくれました。
いつかあるとき、北海道から遠く離れた山深い里や海沿いの小さな町で、
「北の錦」とか「栗山・小林酒造」の文字を見かけ、
「おや?」と首をかしげる人いくたりか。
映画「ぶどうのなみだ」のロケ地にも(エリカのアパート・回想シーン)
小林酒造の敷地内にある工場跡が使われたそうです。
だけど しぼりたての新酒が勢ぞろいしちゃう 「新酒を楽しむ忘年会」だもん
それぞれ旨いので、それぞれ飲みすぎると、
とんでもなく飲みすぎることになる。
なめみそ、揚げた酒粕、サバ缶と酒粕のペーストなど、アテも勢ぞろい。
ずっと水切りしておいてくれた絹ごし豆腐を胡麻油だけでじっくりと揚げ、
日本酒を煮切って手作りしたポン酢で食べさせてくれる人なんて、
小林さんの他になかなかいるもんじゃない。(私の周りにはいない)
五感に恵みの沁みわたる忘年会をありがとう。
話は飛ぶけど、
ハーゲンダッツのCMで流れる心地よい曲が
記憶の底からルパート・ホルムズの「エスケイプ」を釣り上げた。
Rupert Holmes - Escape (The Piña Colada Song)