南京!南京!
昨日疲れって強制終了してしまいましたが、中国映画製作の中で、今すごくその動向が気になっている作品があります。 昨日書いた補助金を受ける監督にも選ばれた、陸川(ルー・チューワン)監督の新作『南京!南京!』です。 題名を聞けばピンと来るでしょう。1937年「南京事件」を描く作品です。 来年、その70周年を迎える今年、「南京事件」をテーマにした映画製作の話があちらこちらで聞こえてきています。その中には、クリント・イーストウッドが監督するだの、チャン・ツィイーがオファーされただの、様々な話が出ては消え、消えては出ています。 自分も中国語を勉強し、かつて中国でも生活していた、ひとりの日本人として興味というか、知りたい事件ではあります。ただ、この事件に関して、日中両国はおろか、両国内でも様々な意見があり、徹底的に検証する価値があると思っています。 なので、偏った見解に基づき映画化され、しかもハリウッド資本で製作された場合、史実がどうであるかにせよ、その映像的インパクトは強烈で、世界中にその認識が広まってしまうのは危険だなという気もしています。 そんな中、中国人監督が撮る「南京事件」はもちろん外せませんし、それが陸川監督と来れば注目せざるを得ません。 陸川監督と言えば、『ミッシング・ガン』で衝撃的なデビューを果たし、『ココシリ』では東京国際映画祭審査員特別賞を受賞し、両作品ともSPE(ソニー・ピクチャーズ)が日本で配給しました。 両方ともそのクオリティーは言わずもがなですが、特に『ココシリ』はすばらしい作品です。チベットカモシカを捕獲しようとする密漁団と、それを阻止する為に民間に組織されたパトロール隊との戦いを描いた実話を基にしたドラマです。 自分は東京国際映画祭で見逃してしまい、去年ソニーがやっと日本公開することになり、ちょっと裏技を使い、マスコミ試写に潜り込ませてもらったのですが、90分弱の短い尺の作品なんですが、大げさではなく息をするのも忘れるくらい、画面に噛り付いてみた記憶があります。 そして砂漠という過酷な状況の中、スタッフや役者さんたちはどんなにか苦労したかと想像するだけで、敬意を払わずにはいられない、そんな作品でした。 この作品の素晴らしいところを挙げればキリがないですが、僕がいちばんいいな、と思ったのは、この手の作品って密漁団vsパトロール隊とし、善悪をはっきりつけた方が分かりやすいはずです。でも、陸川はきちんと両方の視点に立ち、単純な勧善懲悪ではなく描いたおかげで、作品に深みが増しました。 そんな監督が「南京事件」を描くのだから、きっとよいものができるに違いないと思っていました。 しかし、最近製作中止のニュースが新聞に出て、ネットで騒がれたかと思えば、監督自らそれを否定し、2月末にはクランク・インすると否定報道したりと、話が二転三転してます。脚本審査が通っていないのでしょうか。 陸川監督はこの『南京!南京!』をフィクションで描くと言っているようですが、この手の作品を中国側の視点ではなく、両国の視点に立ち描こうとすると、その審査通過は容易でないのは想像できます。 抗日戦争を描きながら、中国側のみの視点に立たず作られた、チャン・イーモウの『紅いコーリャン』やチャン・ウェンの『鬼が来た!』などが中国では上映禁止となったこともあります。 いろいろな横槍が入り、監督のモチベーションが下がらなければよいのですが。 中国映画、がんばれ!