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カテゴリ:読後感あれこれ
「どうせなら金を賭けないか?誰が長生きするか」。 聡(サトシ)、弘(ヒロシ)、明男(アキオ)、正輝(マサテル)、博夫(ヒロオ)、 規子(ノリコ)の6人は、小学校時代からの幼なじみの76歳。 全員ヒマな上、比較的元気なので、時折同窓会を開くが、どこの誰がボケただの、 病気で死んだだの、暗い話題ばかり。 そんなある日、6人の中でも最も明るくマッチョな明男が、こんなラテンな提案をして…。 高度高齢化社会をやさしい希望で照らす、渾身のヒューマン・エンタテインメント。 ユーモア小説かと思いながら読み始めたが、なかなか読みがいのある本だった。 途中で転校した聡が65年ぶりに舞い戻った町で、幼馴染たちと付き合いを深めてゆく。 老年の彼らのそれまでの人生、妻子や孫のこと。 向き合えば、子供の頃の思い出が鮮やかに浮かび、外見は老人でも気持ちは10歳の少年だ。 規子は今に至るまで彼らのマドンナ的存在だが、実生活は苦労も多そうだ。 聡は40歳になっても結婚しない娘と二人暮らし。 みんなそれぞれに持病もあり、年相応の老人だけれど、心意気だけはあの頃のまま。 賭けが始まってまもなく、聡はひょんなことから20歳のエリを居候させることになる。 エリはあることが原因で変わった死生観を持っていた。 孫娘のようなエリと40娘との生活は、聡の日常にさまざまな彩りを加える。 年齢には勝てず、やがて一人づつ寿命が尽きていくが、その間の会話や生活は 実に身に沁みて描かれる。 人間の感性は加齢によって損なわれることはないと力づけてくれるようだ。 ラストシーンの描写は秀逸である。 まさしく「渾身のヒューマン・エンタテインメント」として過言ではない。 自分の老後もこのように受け入れたいと思わせる。 面白くそして身に沁む小説だった。 もっと評価されてほしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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