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カテゴリ:暮らし・健康・医療
副題は「その正しい理解と克服法」
著者は、精神科医の岡田尊司さん。 発達障害「グレーゾーン」について記した一冊。 子どもから大人まで通した問題として、考えていきます。 まず、『第1章 「グレーゾーン」は症状が軽いから問題ない?』では、 「グレーゾーン」と診断の受け止め方について、次のように述べています。 「グレーゾーン」は決して様子を見ればいい状態ではなく、 細やかな注意と適切なサポートが必要な状態で、 それが与えられるかどうかが命運を左右するということを肝に銘じたい。(p.25) そのうえで、本当のADHDよりも疑似ADHDの方が生きづらいこと、 グレーゾーンは愛着や心の傷を抱えたケースが多いことを指摘しています。 次の『第2章 同じ行動を繰り返す人たち - こだわり症・執着症』では、 ビル・ゲイツのや村上春樹の例を挙げながら、こだわりの強さについて述べていきます。 ドラマや映画の主人公は大抵そんな性格の人で、 困難を顧みずに巨悪と戦うことになるのだが、 現実の世界でそうすることは、人生を過酷なものにしてしまう。(p.51) これは、正しさにこだわりすぎることについて述べたもので、大いに納得。 現在TVドラマが放映中の『花咲舞が黙ってない』の主人公などは、まさにその典型でしょう。 そして、『第3章 空気が読めない人たち - 社会的コミュニケーション障害』では、 この障害を示す発達障害の代表が「自閉症スペクトラム症(ASD)」であるものの、 限局された反復的行動が見られないと、ASDと診断されずグレーゾーンになると指摘します。 続く『第4章 イメージできない人たち - ASDタイプと文系脳タイプ』では、 知覚統合に問題がある代表的ケースには、言語・記憶が強いASDタイプ(アスペルガータイプ)と 地図や図形が苦手な言語・聴覚タイプの二つがあると述べています。 言語・記憶が強いASDタイプについては、フランツ・カフカや次のような例を挙げています。 Fさんは真面目な努力家で、学生時代はずっと成績優秀だった。 国立大学の経済学部に進学して、前途洋々かと思われていた。 ところが、就職では、思わぬ苦戦を強いられることになる。 志望する大手企業を次々と落とされてしまったのだ。(p.100) これは、先日読んだ『ルポ 高学歴発達障害』に登場してきた人たちを想起させるものでした・ また、『第5章 共感するのが苦手な人たち - 理系脳タイプとSタイプ』では、 人間の脳には、共感を得意とするEタイプと、システム思考を得意とするSタイプがあり、 Sタイプの例として、ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクを挙げています。 さらに、『第6章 ひといちばい過敏な人たち - HSPと不安型愛着スタイル』では、 「HSP(不安型)」「ASD」「恐れ・回避型」を比較し、 「恐れ・回避型」の例として、夏目漱石を挙げています。 続く『第7章 生活が混乱しやすい人たち - ADHDと疑似ADHD』、 『第8章 動きがぎこちない人たち - 発達性協調運動障害』、 『第9章 勉強が苦手な人たち - 学習障害と境界知能』では、 ダニエル・ラドクリフやトム・クルーズを例に挙げながら、各発達特性について述べた後、 『第10章 グレーゾーンで大切なのは「診断」よりも「特性」への理解』では、 10年後には診断がガラリと変わる可能性について言及しています。 様々な特性について、新書版200頁余りの紙幅に収めたため、 全体を通じて、やや落ち着きがない感じになっているような気もしますが、 「グレーゾーン」について、最新の知見を概観できるメリットは大きく、 様々な方々にとって、読む価値のある一冊だと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.05.11 22:17:34
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