優しい嘘--------------。
実に後味のいい結末のお話だったなぁ。
1冊の本を持ち込んで来た、ニット帽にサングラスをかけたいかにも怪しい男。
すぐに査定するというと、明日の4時にまた来ると言い残し去ってしまったのだ。
男が持って来た本は今はあまり見かけない青木文庫という単行本。
だからと言ってそんな高額の値がつくわけでもないという。
だが・・・最終ページに張られた紙を見て栞子の手が止まる。
それは刑務所内の管理書が張られた「私本」という個人所有の本だったのだ。
つまりあの男は刑務所帰りという事か。
「脱走犯だったりして」
そういったのは甘味所の店長の藤波。
どうやら最近殺人犯が脱走したというニュースを見たというのだ。
しかもニット帽子にサングラスと、犯人の特徴が一致。
まさか本当に彼は脱走犯?
本当にそうか?
想像してみてくださいという栞子。
何故逃走中に古書店で本を売ろうと思ったのか?
金がないから?
だが違うと思うという栞子。
その答えはまだでないけれど・・・。
すぐに通報しろという志田。
だが、買取書に書いてあった名前の「坂口」は、一応お客。
勝手な思い込みで脱走犯扱いするのはどうなのか?
そこで栞子を奥に押し込め、店番は大輔がしろと命じる志田。
そして次に現れたのは、女性。
彼女は坂口の妻でしのぶというらしい。
しのぶは坂口が売りに来た「論理学入門」を返して欲しいと言いだしたのだ。
彼女曰く、坂口は昔、寺で修行していたという。
その時、高校時代の恩師からこの本を貰って性格が変わったというのだ。
その寺での修行は厳しくて、高い塀に囲まれ、面会も短時間しか出来なかったという。
そして、ホステスをしているので、今から出勤だと、あっという間に本を持って出て行ってしまったのだ。
話を聞いた志田は、それは完全に刑務所のことではないのかと言い出す。
でも、しのぶの話だと、坂口とは出所後に知り合っているようなので、脱走犯ではないのでは?
だが、本当の事を言ってるか分からない。
「もしそうだとすると、彼女には本を引き取りに来る別の理由があったことになります」
何かあの本にあるのではないかと邪推する大輔。
志田も隠された金のありかだと言い出す始末。
だが、それをわざわざ古書店で渡しあう意味が分からない。
色々推理をしだす志田。
で、まずその本がしのぶに持っていかれてしまったことが問題だという栞子。
査定を頼まれたのはあくまで坂口から。
妻だというのなら尚更、彼に承諾を得てからにすべきだという事で、しのぶから本を返してもらうため、彼女の働く店に行く事に。
事情を話して素直に本を返してくれたしのぶ。
どうやらこの本に暗号や秘密はなかったようで(^^;)
「論理学入門」は自分にとっても思い出の本だというしのぶ。
10年前、店に飲みに来た坂口。
ホステスになり立てのしのぶはおしゃべりも下手で失敗ばかりだったよう。
そんな時、坂口はずっとしのぶの愚痴を聞いてくれたというのだ。
「私、バカなんです。
バカにはホステスは務まらないんです。
だから私はホステスには向いてないんです」
すると坂口は、論理学入門を用いて言ったのだ。
「今君は三段論法を使った」
バカにはこれは使えないと、彼は励ましてくれたよう。
そして結婚を決意したというしのぶ。
だが・・・そんな坂口が3ヶ月前くらいからおかしいというのだ。
似合わないサングラスをしたり、目線をあわせようとしてくれなくなったり・・・。
一緒にテレビを見ないでラジオばかり聞いているというのだ。
きっと自分と一緒にいるのがイヤになったのだと落ち込むしのぶ。
そして先日は家の本を出張買取ですべて売ったというのだ。
その時にしのぶは「論理学入門」だけは思い出の品だから売らないと救出したというのだ。
それを坂口に返したのだが、結局売りに出かけるところを見てしまい、古本屋を探してビブリア古書堂にたどり着いたよう。
しのぶの話を本気だと判断した大輔。
志田はウソだと思ったよう。
話を聞いた栞子は、坂口はほかにもなにかしのぶに言えないことがあるのではないかと言い出す。
それを解き明かすには売った本を見れば何か分かるかもしれないという栞子。
そこで出張買取をした本屋に行き、明細を見せて欲しいというのだが・・・当然個人情報で無理。
だがその時、せどり仲間の笠井がその店の店長と顔見知りだったようで、志田を友人だと紹介し、新しく仕入れた本を楯にして、買い取った本を見せてくれたのだ。
そこにあったのは・・・「日本の寺」という大量の月刊誌。
それを見た栞子はやっぱりと呟く。
「これで坂口さんの行動の謎がすべて解けました」
そして、約束した翌日。
坂口の登場を待っていた栞子たち。
果たして現れた坂口。
査定額は100円。
それを受け取り帰ろうとした坂口に、栞子は告げる。
「このまま黙っているつもりですか?
奥さまに打ち明けなくていいんですか?」
その時慌てて駆け込んで来たしのぶ。
本を売るなと必死に止めるも、坂口はもういらないと判断したというのだ。
「どうして?ずっと 大事にしてたじゃない。
私にとっても 思い出の本なのに、何で急にいらないなんて 言うの?
せめてどうして売ろうと思ったのか、ホントの理由教えて。
私、何を言われても受け止める」
隠し通せないですよと栞子にも言われて、サングラスを外す坂口。
そしてしのぶの顔の30cmくらいまで近づき、慌てるしのぶに坂口は衝撃の告白をする。
「ここまで近づいても、もう君の顔がはっきり見えない」
坂口は目の中に水がたまる病気で、治ることがないというのだ。
本を売ろうと思ったのは、もう読めなくなるから。
栞子はあの月刊誌の間にスリップ(どの本が売れたか管理するための栞のような紙)が挟まっていたのを見たから気づいたよう。
最新号まで3ヶ月分の雑誌に残されたスリップ。
しのぶは3ヶ月前から坂口がおかしいと言い出した。
サングラスをしだしたのもその頃。
本を処分したことで、栞子は目が見えなくなっている事を察したよう。
目が見えない現実を受け入れようとして本を全部売ったという坂口。
今後は人の手を借りなければいけなくなる。
離婚もしのぶが望めば応じようと思ったという坂口。
すまなかったと謝罪する坂口に、よく分からないと言い出すしのぶ。
「いいか?
本というものは読まれるためにあるんだ。
いくら自分の手元に残したとしても、何の役にも立たない。
だったら他の誰かに・・・」
「あたしが読めばいいじゃない、声に出して」
しのぶは本当に坂口が大好きなだけ。
彼女にとって目が見えないことよりも、自分との思い出を手放してしまわれることの方が寂しかったのだ。
いい女だよな。
「昌志君の目が見えてても見えてなくても、そんなのどうでもいいの。
私がずっとそばにいるから。
何か話したくなったらいっつも声が聞こえるところにいるから。
だってその方が絶対楽しいんだから。
ねっ?」
しのぶの言葉に救われた坂口。
そして論理学入門を売るのをやめると言い出す。
もちろんですとそれを返す栞子。
だが・・・問題がもうひとつ。
坂口が受刑者だという過去。
「その件については、これから先どうするべきか、ゆっくり考えてはいかがでしょうか?」
最終ページを確認した坂口は、栞子の言葉で覚悟を決めたよう。
そしてしのぶにもう一つ話があると言い出す。
「私には前科がある」
明日の食事にも事欠いていた時期があり、金を手に入れるため、空き巣に入ったというのだ。
だが、これでいいのかと躊躇しているうちに家主が帰ってきてしまったというのだ。
今まで黙っていたこと、嘘をついていたことを謝罪する坂口。
だが・・・。
「やだな。
急に改まっちゃって。何の話かと思ったじゃない。
分かってたよ、そんな事」
なんと!!
しのぶってばそんな察しがよかったのか?
「バカじゃなければ分かるよ。
私はバカじゃないんでしょ?
だからずっと前から分かってた。
これも三段論法?」
そう言って笑顔を見せるしのぶに、君と結婚してよかったと感謝する坂口。
2人は仲良く腕を組んで家に帰って行くのだった-------。
ニュースで脱走犯が逮捕されたとの報道が。
いつからしのぶは気づいていたのか?
だが、大輔の問いに、栞子はしのぶは何も知らなかったと答えたのだ!!
知っていれば、軽々しく出家の話などしなかっただろう。
「奥さまは知っているふりをしたんですよ」
「何でそんな嘘を?」
「もし知らなかったと言っていたら、ご主人は10年間ずっと奥さまをだましていたことになります。
ただでさえ病気のことを打ち明けられずに悩んでいたご主人に、これ以上引け目を感じてほしくない。
そう思ったんじゃないでしょうか」
「やっぱり坂口さんの言うとおり、彼女はバカなんかじゃありませんね」
「ご主人も奥さまの嘘に気付いていたと思います。
でもその嘘を暴いても何の意味もありません。
おそらく奥さまの優しさを受け止められたんでしょう」
「いい夫婦ですね」
「いいご夫婦です」
うん。
本当しのぶはいい妻だったなぁ。
優しい気持ちになれた余韻だった。
目が悪いというのは気づいたけど、声に出して読めばいいと言ったしのぶの言葉が、なんだか目から鱗だった。
そっか、本は音読というのも出来るんだと気づかせてくれたもんなぁ。
相手を思った優しい嘘。
実にイイハナシでございました(^^)
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