カテゴリ:読書のココロ(小説)
下町の小料理屋の料理人・澪と彼女を取り巻く人々との人生模様を描いた 「みをつくし」シリーズ6作目。 今巻は「決断の章」。 人生の節目ともいえる大きな決断が短期間に次々と澪に迫ります。 そのひとつひとつに真剣に向き合い、 己の事より相手のことを常に思い遣る周囲の気持ちに感謝と謝罪が織り交ぜになり、 何日も何日も眠れぬ程に悩みになやみ、悩みぬいた先に見えた 澪のゆるがぬ「心星」。 一巻から読み進め、澪により添ってきた読者にとって なんとなく想像していたこととはいえ、 やはり最後に凛として顔を上げた澪の決断に涙せずにはいられないのでした。 昨年の八朔、今春の花見の宴。 どちらの帰り道も、切なく、哀しく、後ろ髪を引かれる思いで一杯だった。 だが、今は違う。 ━━どないに辛いことがあったかて、生きて生きて、生きぬく、と決めた。 亡(の)うなった家族のためにも、自分の人生を諦めへんときめたんや。 そう思うようになるまで、野江がどれほどの涙を流したか、澪にはわかる。 強くあらねば。 野江と同じくらい、強くあらねば。 ━━そういう生き方を貫いたなら、きっと厚い雲も突き抜けられるやろ。 私はそう信じてる。 ( 本書より ) 野江というのは、主人公・澪の親友であり、幼なじみであり、 互いに唯一無二の存在。 今は互いに生まれ故郷の大阪を離れ、天涯孤独の身。 互いに辛い運命に翻弄されつつも、懸命に今を、己の人生を生きています。 訳あっておなじ江戸にいながらなかなか会えないふたりなのですが 久方ぶりに会話をかわした彼女の言葉に、澪は心をふるいたたせます。 でも、その澪の決断は、読者にはあまりにつらい。 澪の周囲もきっと同じ気持ちであろうと、物語のなかに入り込んで いっしょになって泣いてしまいます(笑) 最初から文庫本サイズでの刊行、読みやすい文章に加え、 ほろりとくる下町人情、やきもきする展開、運命の悪戯、身分違いの恋、 主人公・澪とその親友・野江の困難の多い人生、、、、と 時代小説は苦手という女性でも読みやすく手に取りやすいシリーズ。 私も歴史小説は苦手なのですが、これは歴史背景などが殆ど書かれておらず そういったことを気にせずにするすると読めるし、毎回泣けるし(笑) 読み終わる端から話の先が気になって気になって気になってもお~~~!という、 いわば、江戸を舞台とした軽めの現代小説。 本格的歴史小説がお好きなかたには、色々ツッコミどころが多いかと思いますが (歴史に疎い私でも「ん?」と思う箇所が度々あるので) それでも!一読の価値アリ!と推したい!シリーズです。 章立て毎に澪オリジナル一品料理の名前がつけられているのですが それがまた、おいしそうで! お料理好きなかたにもお勧めですよ
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最終更新日
2012.04.27 23:19:23
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