お 葬 式 の 才 覚
か ら だ の 始 末 と 心 の 整 理 の つ け 方
は じ め に
このところ「 葬式は必要ない 」「 戒名で高いお金を支払うのはﾑﾀﾞ！ 」
「 葬儀社が請求する金額は、不明朗でけしからん！ 」
といった話題がつきません！」
高齢社会を迎え、日本人の多くにとって、葬式がそんなに遠くない
未来にわが身に降りかかる問題であるからこそ、あらためて葬式の
あり方が見直されているのでしょう。
しかし、そんな風潮に対して、仏教界の反応は鈍いと言わざるをえません。
僧侶同士の集まりなどでは、
「 戒名料は、ゴニョニョ・・・・・」
「 でも葬式は必要だよ、ゴニョニョ・・・・・」などという話題も
出てくるのですが、残念ながら、なぜ葬式が必要なのか、
なぜ「 戒名料 」が必要なのかについて、明確な答えが出て
いるようには見えません。 なぜでしょうか。
じつはそれは、僧侶の怠慢や勉強不足のせいだけではありません。
葬式や戒名は、多くの方が指摘されているとおり、本当は
「 やらなくていけないもの、なくてはならないもの 」
ではないからなのです。
葬式にも、戒名にも、もともとは明確な意図がありました。
しかし、そのやり方は地域や寺によってまちまちです。
そのうちに、だんだん慣習やしきたりとして「 儀式 」だけが伝えられ、
その意義が不明瞭になってしまったのです。
本来は単純明解で安上がりなものだったのに・・・・」
それならば、葬式や戒名の仕組みをよく調べて、最小の努力と費用で
最大の結果が得られれば、一番お得でしょう。
それこそが、僧侶から見れば最も徳の高い、そして施主（葬式をおこなう人）
から見れば最も経済効率の高い、賢いやり方ではないでしょうか。
葬式も戒名も、ただの慣習とかイヤイヤやらされるしきたりとしてではなく、
その意義を知ってやるならならば、多大な効果をもたらします。
また、意義を知ったうえでなら「 それなら私には必要ない 」と
やらずにすませるという選択もできます。
正しい知識があれば、自分でしっかり判断できるのです。
この本では、葬式と戒名について、僧侶の立場から語ります。
葬式や戒名について、
「 本来の意味はこうです 」
「 こういう仕組みになっています 」
「 こうやれば、こういう結果になります 」
といったことを、お釈迦さまの教えにもとづいて、
ありのままの事実を、ただ、そのまま、お伝えします。
事実を知って、それからどうするかは、皆さまがご自分で
決めることなのです。
お釈迦さまの教えに強制はありません。
葬式と戒名と、自分自身の死の問題。
これは誰にでもいつかはかならず訪れます。
本質を理解してあらかじめ自分自身で選択しておけば、
誰にも迷惑や大きな負担をかける心配がなくなります。
今のうちから、来るべきときに備えておいてはいかがでしょう。
著者： 藤本 晃
２０１１年５月２８日 第１刷発行
１９６２年生まれ。学習院大学哲学科、龍谷大学修士課程、
カナダ・カルガリー大学修士課程を経て、広島大学博士課程修了。
文学博士。
