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貴方の仮面を身に着けて

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2007/01/20
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カテゴリ:窓の記憶(旧)
「堕ちた愛」#12-3


それはどちらが先に望んだのか、すでに二人には解らなかった。解っているのは今は二人共望んでいるという事だった。掛布が嵐の海の様に波打ち乱れた上で、二人は抱き合っていた。
「ねえ、灯を消して・・」
朱雀は枕元のスタンドに手を伸ばした。朱雀の目が闇の中でも良く見える事を、朱雀は百合枝には言わなかった。朱雀の心の端に触れていくものがあった。
(三峰、笑うなよ)
”絆”を結んだ以上、二人は離れていてもお互い感情の流れをどこかで受け取っている。久しぶりの朱雀の男の血潮のたぎりを、三峰は感じているはずだった。こういう時は控え目に、見て見ぬ振りをする礼儀正しい三峰である事も朱雀は知っていた。

夜が朱雀と百合枝を包み込んだ。
二人は夜の底まで深く沈み込んで行った。

ある事に気がついた時、もはや朱雀は止める事の出来ない状況に陥っていた。そのまま、情熱のままに激しく愛の行為を遂げてしまった。朱雀の背中に細い指先が爪を立てた。その痛みすら朱雀には喜びに感じられた。愛欲の嵐が過ぎ去り、汗に濡れ、互いの荒い息を聞きながら、二人はぴったりと重なり合っていた。やがて大きく息を吐き、朱雀が身体をずらした時、朱雀は苦痛に眉を寄せ、目を閉じ耐えている百合枝の顔を見た。苦痛ばかりでない事は、わずかに緩んだ口元に漂う気配が示していた。白い太股やシーツに、赤く百合枝の証が残されていた。

朱雀は百合枝を抱きしめ、かすれた声でささやいた。
「キミは・・」
百合枝は朱雀の厚い胸に顔を隠した。朱雀は言いかけた言葉を飲み込み、百合枝の豊かな黒髪に顔を埋めた。朱雀は百合枝を再び抱きしめた。優しく髪を撫で、額にこめかみにくちづけを繰り返した。朱雀は「すまない」とは言わなかった。謝る位であれば、抱こうとは思わない。女性の噂が多いと思われている朱雀だが、一夜限りの慰めに女性と関係を持つ事はなかったのだ。愛の証を朱雀の舌が丁寧に舐め取った。それは朱雀の命になった。



(続く)
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Last updated  2007/01/20 12:58:48 AM
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