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貴方の仮面を身に着けて

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2007/02/01
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この人は何という目をして絵を観ているのだろう・・

一枚の油絵の前で、その人はずっと立っていた。特に目立った風貌でも服装でもない。けれども彼の周囲の空気には見えない何かが煌いていた。それが私が出会った最初で最後の池田満寿夫だった。

着物を着て文豪気取りや大家の真似事をしたり、派手なファッションでアーティストのふりをしなくても、芸術家である人はそういう顔をしているものだ。この情報化の時代では自己宣伝も大切なのだろうが、空虚で安物の氾濫はそこから始まっている。

本の中で、ピカソについてのページが多く割かれている。それだけ強い思いをピカソに感じていたのだろう。尽きせぬエネルギー、話題性、スキャンダルも含めて、奔放に変貌していく彼の世界・・一人で何倍も生きてしまった人と同じ世界に生きるのは大変な事だろうと、門外漢でも感じるのだ。

読んでいると声が聞こえ、色が見えて来る。描く様に書き、書く様に描いていたのだと、「絵の中から文学を排除する」・・その意味を正確に理解する程の感性を持たぬ私にはそう思えた。

画家達に対する思い・・本を読んでいくと彼等に何を感じたか、文字の合間に垣間見える気がする。彼が亡くなってからもう十年が過ぎてしまった。良きパートナーであった佐藤陽子の後書きには、まだ生々しい慟哭がある。

壊れていくのは君のほうだ。

確かに、彼の精神は壊れずに、今もこの本に、この世界のそこかしこに息づいている。私は壊れる前に、少しでも彼の観た世界を観る事が出来るのだろうか。





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Last updated  2007/02/01 01:22:24 AM
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