カテゴリ:二次創作小説
「この私が、死神を助けるとはな」
病院の片隅の個室である。千雪は寝台の上に半身を起こし、目の前の竜弦を怯えた目で見ていた。片手を白衣のポケットに入れた竜弦は、千雪に近付くと、もう片方の手で乱暴に千雪の二の腕を掴んだ。そして顔を寄せて、低いが激しい声で問いかけた。 「お前の姉はどこにいる?」 掴まれた痛みと竜弦の目の奥の冷酷さに、千雪は更に怯え、うっすらと唇を開いた顔をゆっくりと左右に振り、目を伏せた。 「言え!知らないとは言わせんぞ!」 竜弦は腕を掴んだ手に更に力を込めた。そしてポケットから出した手で千雪の長く豊かな髪を掴み、顔を上向かせた。千雪の顔は恐怖で引きつった。 「死神め、私を甘く見るな」 その時、天井のスピーカーから声が響き渡った。 「院長先生、院長先生、至急、第一外科室までお戻り下さい」 竜弦は千雪の目から目を離さないまま、手だけを離した。 「後で、たっぷりと話を聞かせてもらうからな」 竜弦が出て行くと、千雪は寝台に崩れるように横たわった。何が起きたのか、千雪にはまったく理解が出来ていなかった。道を歩いていて苦しくなって倒れ、気が付いたらここにいた。目覚めると見知らぬ男がいた。だがどこかでその男の気配を感じた事があるようにも思えた。 (あれは誰だろう・・) そして千雪は、もっと大切な事に気がついた。 (私は・・誰?) ルキアは伝令神機をポケットにしまった。一護の部屋である。現世の情報を仕入れる為に「じょせいしゅうかんし」を床に寝転んで読んでいたのである。隣で同じ様に「しょうねんじゃんぷ」を読んでいたコンが、ぴょこんと立ち上がって言った。 「急ぎの任務ですかい、姉さん」 「いや、浮竹隊長からだ。同じ隊の者が近くに赴任して来るのでよろしくとの事だ」 「へえ、隊長さんがねえ」 「浮竹隊長は優しい方だからな。初めての駐在任務に就く者を心配しておるのだろう」 自分のベッドに寝そべっていた一護が声をかけた。 「そいつはどんな奴なんだ?」 「そうだな・・」 ルキアはスケッチブックを取り出すと熱心に絵を描き出した。描き終わるとそれを寝ている一護の目の前に差し出した。 「こんな奴だ。瀬能という、なかなかの美人だぞ」 そこにはウサギとも人ともつかぬモノが描かれていた。一護はその絵を見上げながら、聞かねば良かったと思っていた。 遠い場所で、笑う者がいた。大きな椅子にゆったりと座り、双眸に熱い理想と冷たい峻厳を共に宿していた。その者はつぶやいた。 「同じ手は二度食わぬぞ、浦原喜助・・」 その男の名は、藍染惣右介という。 (続く) 第一話 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 掲載された小説はこちらのHPでまとめてご覧になれます ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/03/30 12:29:05 AM
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