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貴方の仮面を身に着けて

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2010/09/01
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ダイヤ

百合枝の元に一枚の葉書が届いた。

叔母の葬儀の知らせだった。差出人は御影詩織。朱雀は葉書を見ながら尋ねた。
「キミの従姉妹なのかね?」
「私より七つ下」
「普段の付き合いはないのかね?」
「悠二郎叔父様は、お爺様に画家になる事を反対されて家を出たの。だから御影の家とは疎遠で」
「なるほど」
「お爺様の葬儀の時も、お知らせはしたけれど」
百合枝は言った。
「玲子叔母様は、今更そのような席に出るのは申し訳ないと言って、後でこっそりとお線香だけ上げに来られたの」
「慎み深い人だね」
「優しい方だったわ。叔父様が早くに亡くなられたので、お爺様も後悔する気持ちがおありだったのか、叔母様と詩織さんの事を気にかけていらしたみたい」
「そうか、キミの代わりに私が行って来よう」
「そうしていただける?」
「ああ」
「それと詩織さんの事」
「ああ、悪い様にはしない」
「お願い」

朱雀は詩織の事を新明(しんめい)に問い合わせた。百合枝の家の件を任せた弁護士である。
「間違いありません。剛三氏の次男、悠二郎氏のご長女です」
新明は気が利く男だった。すぐに資料と共に朱雀の社長室にはせ参じた。

「悠二郎氏の死後、御母上とお二人でご苦労された様です。母の玲子様は、剛三氏からの援助の申し出も断ったそうで。御影の家に迷惑をかけたくないと」
「随分と他の親族とは違うようだな」
新明は笑った。
「親族の中で、この母子のみが、最初から権利を放棄されました」
「それで?」
「私は法は公平であるべきだと思っています」
「お前らしいな」
「私がお尋ねした時も固辞されましたが、詩織様の将来の為にもと説き伏せて、お二人の相続された分は私の管理下にあります。百合枝様に比べれば些細な額ではありますが」
「その件も、彼女と話し合う必要があるな」
「はい」
「百合枝も気にかけている」

「社長」
「何だね?」
「詩織様は会社を退職された直後のご様子です。その・・人減らしで。詩織様の相続分は信託化して月々決まった額をお渡しする形ですが、それで生活のすべてを賄うにはいささか・・」
「分った」
朱雀は新明を笑顔で見た。
「お前は戦場よりも法廷での戦いに向いているらしいな」
「恐れ入ります」
彼も”盾”の一人であった。

(つづく)





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Last updated  2010/10/05 03:33:47 PM
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