東北地方の進学校
10日ほど前に、「中学校卒業時に学力上位10%(10%er)が普通選ぶと考えられる高校」について、福島、宮城の両県の現状を紹介しました。これ、「各県ごと」ではなく「東北地方全体」で調べてみたら、どんな形になるかなぁ? そんな考えが頭をもたげ、昨年暮れからいろいろと調べておりました(笑) こちらの資料によると、昨年3月に東北地方の中学校を卒業した生徒は85,033人、また今年度に中等教育学校の後期課程1年次に在籍している生徒は169人なので、10%erは8,520人前後ということになります。で、県境関係なく各校の状況を調べてみると、概ね「旧帝一工への合格者が現役、浪人あわせて10人」「入試難易度は各県にある高専よりもやや上」が選出の目安になるようです。以下、私が選んだ高校を紹介しましょう。【青森県(中学校卒業者12,666人)】◎選出校青森(普通科280人)、弘前(普通科240人)、八戸(普通科240人)、五所川原(普通科160人、理数科40人)合計 4校5学科 定員960人◎コメント上記の4校は、昨年の実績が「旧帝一工への合格者が現役のみで10人」を超えています。面白いのは、県庁所在地にある青森よりも弘前、八戸の方が進学実績が良いことで、国立大学のお膝元である弘前市、南部地方の中心都市である八戸市がそれぞれ意地を示した格好。この3校に、津軽地方北西部の優秀層をガッチリ捕まえている五所川原が続きます。「青森県の上位10%er」であれば、上北地方のトップ校であり中高一貫校でもある三本木(普通科240人、うち中入80人)が入りますが、上北地方自体が青森、八戸両市に優秀層が流出する傾向があるため、「東北地方の上位10%er」には入らない模様。その他、青森東、弘前中央、八戸北といった各都市圏の二番手校もあと一歩。【岩手県(中学校卒業者12,083人)】◎選出校盛岡一(普通科+理数科280人)、盛岡三(普通科280人)、花巻北(普通科240人)、黒沢尻北(普通科240人)、水沢(普通科+理数科240人)、一関一(普通科+理数科240人、うち中入80人)合計 6校9学科 定員1,480人◎コメント選出したのはすべて内陸部の高校。沿岸部にも大船渡、宮古といった有力校がありますが、いずれも上記の高校には進学実績で及ばないと判断しました。盛岡市以北の高校も選出できませんでしたが、久慈市や二戸市からは八戸市への越境通学が一応可能です。なお、「岩手県の上位10%er」となると、黒沢尻北か水沢が脱落する格好か。地域バランスで言えば岩手中部学区の二番手校(トップ校は花巻北)である黒沢尻北よりも胆江学区のトップ校で理数科も有する水沢の方が優位なのですが、胆江学区自体が北部の金ケ崎町で黒沢尻北への流出がある他、一関一の中高一貫化に伴い奥州市内から一関一(中)への進学がみられるため、優秀層の確保に苦しんでいる模様。結果、進学実績は「黒沢尻北≧水沢」となっているのが現状です。また、私立では盛岡中央の特進選抜SZコースおよび特進Zコースも選出候補に挙げられそうな進学実績を残していますが、両コースの定員が明確にされていないため、選出できませんでした。この手の情報公開不備は、容赦なくペナルティの対象とします。【秋田県(中学校卒業者9,101人)】◎選出校秋田(普通科+理数科275人)、秋田南(普通科+理数科240人、うち中入80人)、横手(普通科+理数科235人)合計 3校6学科 定員750人◎コメント秋田県でもペナルティ。恐らく「秋田県の上位10%er」に入ってくると思われる大館鳳鳴(普通科+理数科235人)が、昨春の合格実績を現時点で公表していません。他のサイトを漁ってみると東北大学だけで現役、浪人あわせて12人の合格者を出しているようなのですが、あくまで噂レベルと判断し、選出しませんでした。なお、大館市からは弘前市への越境通学が可能です。選出した3校は、旧帝一工の合格者が現役だけで10人を余裕で超えており、県内では図抜けた存在。また、次点は、大館鳳鳴の他、秋田北、能代、本荘といったところか。【山形県(中学校卒業者10,684人)】◎選出校山形東(普通科240人)、山形南(普通科240人、理数科40人)、山形西(普通科240人)、米沢興譲館(普通科160人、理数科40人)、鶴岡南(普通科160人、理数科40人)、酒田東(普通科200人)合計 6校9学科 定員1,360人◎コメント岩手、秋田両県と同様県庁所在地のトップ校である山形東が図抜けた存在で、山形南、山形西、米沢興譲館、鶴岡南の4校が旧帝一工への現役合格者が10人台と健闘し、後を追う形です。酒田東はこれらの高校よりも若干進学実績が劣っており「山形県の上位10%er」としては選出漏れとなりそうですが、他県とのバランスを勘案すると「東北地方の上位10%er」には食い込んできそうです。なお、次点は山形中央、寒河江、新庄北、長井といったところ。今春に開校する東桜学館も、天童、東根、村山各市の優秀層を確保することができれば、今後が楽しみです。【宮城県(中学校卒業者21,570人、中等教育学校後期課程1年次在籍者169人)】◎選出校仙台一(普通科320人)、仙台二(普通科320人)、仙台三(普通科240人、理数科80人)、宮城一(普通科200人、理数科80人)、仙台二華(普通科240人、うち中入105人)、泉館山(普通科280人)、仙台向山(普通科160人、理数科40人)、仙台青陵中等教育学校(140人)、聖ウルスラ学院英智(特別志学Type1 48人、一部中入あり)、東北学院(普通科360人、うち中入180人)、石巻(普通科240人)合計 11校14学科 定員2,748人◎コメント「宮城県の上位10%er」には入らなかった高校の中から、石巻、東北学院の両校を選出しました。石巻は旧帝一工への合格者が現役、浪人合計だと10人を超えます。私立男子校の東北学院はこのラインには達していないものの、むしろ国公立大学より私立大学の合格実績が目立っており、早慶上理やMARCHの合格者は仙台三に匹敵する人数。また東北地方の高校にしては珍しく、関関同立の合格者も目立ちます。次点は、白石(普通科のみ)、仙台南、泉(普通科のみ)、宮城野(総合学科のみ)、古川と県立だけでも多士済々。特に古川は中高一貫校の古川黎明や私立の古川学園(普通科進学コース)と地元の優秀層を分け合う形になっているだけに、ちょっと残念な結果です。私立は、前述の古川学園の他、仙台育英、尚絅学院、仙台白百合学園、宮城学院の特進系コースの他、聖ウルスラ学院英智の特別志学Type2も次点格か。【福島県(中学校卒業者18,929人)】◎選出校福島(普通科320人)、安積(普通科320人)、白河(理数科40人)、会津(普通科280人)、磐城(普通科320人)合計 5校5学科 定員1,280人◎コメントなんと、定員数が岩手、山形の両県を下回るという非常に残念な結果… この責任は、「福島県の上位10%er」に入る橘(普通科320人)、安積黎明(普通科320人)の両校にあります。いずれも国公立大学の現役合格者が100人を軽く上回っているものの、旧帝一工の合格者は現役、浪人合わせても10人に達せず。定員がいずれも320人と他県の高校に比べて多いだけに、選外とせざるを得ませんでした。青森県にも同じことが言えますが、都市圏が分散すると二番手校の進学実績も落ちる傾向にあるようです。逆に、白河理数科は昨春における同校全体での東北大学の現役合格者(5人)のうち4人を占めているため、堂々の選出。次点は橘、安積黎明の他、県立で福島東、白河普通科、私立で福島成蹊、日大東北、いわき秀英の特進系コースが入りそう。結果、6県合計での選出校は、35校48学科、定員8,578人となりました。10%erの実人数よりも定員が若干多くなりますが、各校の中退者などを考慮すると、実際の在籍者は実人数により近い数字になるものと思われます。