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カテゴリ:茶木の音楽紀行
月曜日の夕方に早速僕のアパートまで車でテレビを持って来てくれた。
ベルが鳴って下に下りて行くと彼女がやはり不機嫌そうな顔で立っていて、僕の顔を 見るとゴルフの後部座席からそんなに大きくはないテレビを下ろし、僕の足元に置い て「古いからすぐ壊れるかもしれないけど」といらいらしているような早口で言った 。 僕は「部屋でお茶でも」と言おうとしたが「それじゃ」と言ってさっさと車に乗り込 んで帰って行った。 古いとはいえテレビはとてもきれいに映り、その日の夜は刑事コロンボを見た。 日本でも昔から見ていたので懐かしさもあって意味が分からなくても集中して見るこ とが出来、毎週見ていると随分ドイツ語に耳が慣れた。 ある日またクワストフにコンサートに誘われ、ケルンのフィルハーモニーというコン サートホールにヘルマン・プライのコンサートに出掛けた。 彼の歌を生で聴くのは初めてで、プログラムも面白く、とても良い声で人柄も良さそ うな人だったが、やはり始めから終わりまでずっと音程が低くどうも僕は居心地が悪 かった。 休憩時間にロビーに居るとマルガレーテがご主人と二人で来ていて、彼女は彼とそっ と腕を組み、我々を見付けると「まー来てたの」と言って近付いて来た。 何と彼女の顔には満面の笑みがあり、とても優しい穏やかな女性に見えまるで別人の ようだった。 少し会話して彼らが立ち去った後フワストフと僕は顔を見合わせた。 何だかそれ以来彼女は少しずつ僕に慣れ、授業の後には「トシ、乗って行く?」と声 を掛けてくれるようになった。 レッスンでは相変わらず誰とも会話しなかったが、車の中では僕といろいろ話した。 その頃には僕も簡単な会話ぐらいなら少し出来るようになっていたが、ちょっと込み 入った事を言われるともう分からない、でも神経質そうな彼女もそういった事にはと ても気が長かった。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.01.23 10:33:26
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