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カテゴリ:第8話 青年インカ
そのような敵兵たちと街の様子を、裏山の崖上から、まんじりともせず見届けたアンドレスは、僅かに瞼を伏せて、街の方向に弔いの礼を払った。 生き延びて、がむしゃらに陸地を探すスペイン兵たちの浸かる水底には、その何倍もの、否、何十倍もの、敵兵たちの亡骸が浮遊していることだろう……。 今のアンドレスには、命からがら生き延びた彼らまで追い討ちをかけにいく気持ちには、到底、なれなかった。
特に、此度の水攻め作戦は、己が言い出したこととは言え、今、こうして終わってみれば、眼下に展開する情景は、あまりに悲惨極まりない。
否、敵方だけではない――己の不手際故に至った銃撃戦では、味方の兵にさえ、少なからぬ犠牲を生じてもいたのだ。
いや、実際に、和議の場だって設けた…!! スペイン兵たちさえその気があったなら、俺は、彼らを安全に当地から退却させる準備があったのだ…なのに……! 敵はあまりに強硬だった…だから、結局は、ここまでせざるを得なかったんだ――……!)
アンドレスは、微かに震える指を握り締め、俯(うつむ)いて目を伏せた。
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