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カテゴリ:第10話 遥かなる虹の民
ひとキャラメッセージアリスメンディは、神父らしい面持ちで、次のように語った。 「わたしを匿(かくま)うことを願い出てくれた聖カタリナ修道院の修道院長が、ラス・カサス殿や聖ローザを崇敬している人物なのだ。 修道院長という立場上、修道女たちを危険にさらすわけにはいかないから表向きは解放闘争に参加はできないが、水面下で支援したいと申し出てくれてね」 そこで彼はいったん言葉を切ると、視線を落として物憂げに続けた。 「──かといって、わたしとしても修道院を危険にさらすわけにはいかないから、そう長居をするつもりはないがね」 「ラス・カサス殿といえば、アリスメンディ殿と同じようにスペイン人の聖職者の方ですよね。 聖ローザはスペイン人とインカ族の混血児ですが、やはり敬虔な聖職者だったかと」 そう応じたアンドレスに、アリスメンディは「ほう、よく知っているな」と、鋭くも今は穏やかな光を湛えた眼差しを向ける。 「はい、一応、俺も以前は神学校に通っていましたので。 …って言っても、俺の場合は聖職者になるためじゃなく、インカ皇族や貴族は強制的にクスコの寄宿制神学校に入れさせられていたってだけですが。 俺たちを囲い込んで、危険な思想に触れさせないよう監視するための教育システム。 スペイン人の支配者たちが考えそうなやり方です」 アリスメンディも同意する。 「うむ。 だが、そのようなスペイン側に都合のいい思惑も、結局は無駄だったということになるな。 こうして、そなたたちは植民地の圧政に対して反旗を翻すことになったのだから。 いずれにしろ、アンドレスの言う通り、ラス・カサス殿や聖ローザはスペイン人の血を引きながらも、当地の民のために献身的に行動した聖職者だった。 活躍していたのは、もうずいぶん昔──それこそ、インカ帝国が侵略された渦中の頃だったがね」 すると、マリオも瞳を輝かせながら言葉を挟んだ。 「私も聖ローザは大好きだ。 ほら、お守りも持ってる! この修道院を去る時、院長先生がくださったんだ」 そう言って、マリオは衣服の下に提げていたペンダントを首元から引っ張り出した。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) ≪アンドレス≫(インカ軍) ≪ジェロニモ≫(インカ軍) ≪ペドロ≫(インカ軍) ≪ヨハン≫(スペイン軍) ≪マリオ≫(インカ側) ≪リリアーナ≫(インカ側) ≪アリスメンディ≫(インカ側) ≪モスコーソ大司教≫(スペイン軍)
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