テーマ:思ったこと 考えたこと(866)
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まだ記憶に新しい、ギリシア債務危機の報道で頻繁に登場した当時のギリシアの財務大臣、Yanis Varoufakis(ヤニス・バルファキス)、いかつい顔つき、スキンヘッド風の頭、がっしりとした上半身を革ジャンに包みオートバイに跨る男、メルケルに率いられたユーロ指導者・債権者グループを相手に最後まで頑強に戦って破れ、昨年夏職を辞した。彼のインタビューを数分聴き、理にかなってると思ったので、彼の1時間ほどの講演もユーチューブで観てみた。
昨夏にギリシア政府が押しつけられた倹約政策では、十中八九ギリシアは再生しないだろうし、それゆえ膨大な借金も返済することは不可能だろう。バルファキスは、債権放棄を含む債務の見直し以外に債権側(ヨーロッパの諸銀行)と債務側(ギリシア)の両者が生き残る道はない、と主張した。債務構造を維持したままの追加融資と倹約政策では、数年のうちに再燃するのは明らかである、と。バルファキスに言わせれば、債権者グループも理屈は分かっていたのだが、最終的には強硬派に従うほかなかった。バルファキスの話では、強硬派のリーダーは彼にこう言った、「あなたの理論が正しいのは分かります、でも、理解してください、私たちはこの問題の解決に、膨大な政治的な投資をしたのです、ですから私たちが信頼性を失わないために、ギリシアはこの解決策を呑むしかないのです」と。つまり、ヨーロッパの経済と政治の権力者たちの面子を保つためには、ギリシアは一旦この案を受け入れるしかない、という建前の解決策だったのだ。 バルファキスは数理統計学の修士号(1981年)をイギリスのバーミンガム大学で、経済学の博士号(1987年)を同じくイギリスのエセックス大学で取得している。イギリス、オーストラリア、ベルギー、ギリシアの大学で教鞭を取った後、2004年から2006年にかけてギリシアのパパンドレウ首相のアドバイザーを務めたこともある。2015年1月から9月まで、ツィプラス首相のもと、財務大臣の任に当たった。2016年2月に、Democracy in Europe Movement 2025という政治社会運動を始めた。 経済学やゲーム理論の本を数冊出していて、2011年の著作(2015年には改訂三版が出ている)、「The Global Minotaur: America, the True Origins of the Financial Crisis and the Future of the World Economy(世界経済のミノタウラス、アメリカ)」は、アメリカ経済の赤字を賄うための日本、ドイツ、中国の黒字還流、という現代のグローバル資本主義の構造を端的に描いている。2007-2008年の世界財政危機の原因と伝播のメカニズムをわかりやすく説明している。 印象としては、反ネオコン、反新自由主義の、やや左がかった経済学者・運動家というところか。今後の活動に注目したい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.04.30 14:56:11
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