カテゴリ:書籍の紹介
■今日の名言。
是非に及ばず by織田信長(口癖らしい。最期の言葉でもある。仕方ない、あれこれ言っても始まらないという程度の意味か) ■外川淳という人の「城盗り」三部作が面白い。お奨めします。文庫書き下ろしということですからあまり知られていないのかも知れません。私は出張のたびに買って読んでいました。 ■よく知られた戦国ビッグネームの3人を「城盗り」という観点から追った本です。関ヶ原の戦いや川中島の合戦のようにがっぷり組んだ戦いは派手で面白いのですが、実際には籠城戦の方が圧倒的に多かったはずです。破滅しないためには雌雄を決する戦いをなるべく避けねばなりません。したがって戦わずに守りを固めるという戦法を取らざるを得ません。 ■そこで天下を狙う三人はどのように守りを固める城を攻略していったのか?を詳細に書いています。信長の天才性、秀吉の応用力、家康の堅実さがよく分かります。 ■この作者の姿勢はロジカルです。俗説に囚われず最も合理的な仮説を採用しようとしています。そこがこのシリーズの最大の魅力です。 例えば、織田信長が実際には非常に慎重な行動原理を持っていたことを提示しています。秀吉以上に「危ない橋を渡らない」という方針を貫いていました。援軍を頼んでも腰が重い信長には、家康も何度か切れかけたようですが。 ■徳川家康が織田信長と同盟した時、二人はほぼ対等の立場でした。しかし京都を押さえた信長が飛躍したのに対して、東に強敵を持っていた家康は業容を拡大することができません。力関係に差が開いたため、次第に信長によって家臣のような扱いを受けるようになります。 信長の天下布武のために酷使された上に、あろうことか、正室と嫡子に武田方と内通の疑いありとイチャモンをつられて処刑を迫られます。部下としての地位を思い知らせるための方策と言われています。家康はそれに従い信長に忠誠を誓います。 いかにも信長の非情さ残忍さ、覇王としての適性を示すエピソードとして語られることが多いのですが、この本の中では、実際に内通はあった(あってもおかしくない)という解釈をしています。 ○まず徳川としては、織田と武田どちらが勝っても生き残れるように保険をかけておく必要がある。そこで正室や嫡子のルートで武田と交渉できるようにしておくことはむしろ自然な所作である。 ○織田はそれを承知の上である。自分が落ち目ならば裏切られても「是非に及ばず」むしろ、徳川が明確に敵に回ることは避けなければならないので、織田と武田の力が拮抗している間は知らん顔をしておく。 ○長篠の戦いの後、武田が落ち目になった時、けじめとして徳川に責任を迫る。織田が勝つことが確実になった今、徳川は生き残るために織田に忠誠を誓わざるを得ない。 要するに、お互い「生き残る」という目的に最善の行動をとったということです。私はこの説に納得しました。 (関ヶ原の戦いでも、殆ど全ての武将が、どちらが勝ってもいいように、水面下で二重外交を行っていたとこの本では語られています) ■戦国時代の戦いの事情がよくわかります。全国の城跡を訪ね歩くのが趣味というだけあって、実証的に思えるように書かれています。城攻めの実情なども詳しく書かれており、様々な発見がありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 5, 2007 05:53:36 PM
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