カテゴリ:バレエ(国内バレエ団)
モーリス・ベジャール生誕80年記念特別公演シリーズ(1)
チャイコフスキー記念 東京バレエ団 《ベジャール=ディアギレフ》 ディアギレフ・プロ ゆうぽうと簡易保険ホール 開演15:00 指揮:アレクサンドル・ソトニコフ 演奏:東京シティ・フィル・ハーモニック管弦楽団 ●「牧神の午後」 振付:ヴァツラフ・ニジンスキー 音楽:クロード・ドビュッシー 牧神:首藤康之 ニンフ:井脇幸江 これまでに映像では観たことがあったけれど(プリセツカヤ&ジュド:前回の”バレエの美神”)生は今回が初めて。これがウワサの?牧神かぁ…しかも首藤さんだし~と終始ワクワクして観てしまった。 あのニジンスキーの振付によるこの作品は、とにかく平面(二次元)表現に徹していて、まるで絵画を観ているような錯覚におそわれる。背景の森もアール・ヌーボー絵画的で、立体物は牧神の横たわる岩のみ。ダンサーは常に胴体を正面、顔を横に向け「すささささささ」と横移動する。古代エジプトやギリシャの絵画が、そのままパタパタ漫画になったような、奇妙な振付けだ。いわゆるバレエ(orダンス)を想像して観た人には、ある意味「なんじゃこりゃ」だったかも(笑)。バレエなのに、跳躍も回転もまったく無い。ニジンスキーは、ギリシャの壷絵からインスピレーションを得たそうで、三次元の世界を2次元化するという挑戦的な試みだったそうな。ふむふむ。 そんな具合に一種独特な振付けだけれど、別世界を俯瞰的に眺めているような不思議な感覚と、詩的な美しい印象が残る作品だった。 首藤@牧神は、威厳ある神様というより森に棲む妖精のようだった。ナルシスティックな可愛い牧神?岩の上でたわわに実った葡萄を貪り食らうのも、ニンフ@井脇さんへの求愛も、残されたスカーフに身体を擦り付ける(自慰)のも、エレガントでありながら、どこかしらオドオドしている感じ(悪い意味じゃないヨ)が漂い、どこまでも「首藤さん」なのであった。 井脇さんのニンフは、楚々とした中にも女神の気品があり、とても素敵だった。 カーテンコールでも二次元ポーズを崩さないこだわりにブラボー。 ●「薔薇の精」 振付:ミハイル・フォーキン 音楽:カール・マリア・フォン・ウェーバー(編曲:L.H.ベルリオーズ) 薔薇:木村和夫 少女:吉岡美佳 (ビデオを含めて)世界の名だたるダンサーの「薔薇」を観ているせいか、どうしても厳しい目で観てしまう自分がいけないのだけれど…木村さんも頑張っていたと思うのだけれど…「…?」な印象で私的にダメでした。テクニックと柔軟性+「精」たる何かが必要不可欠なんだなぁ。(ちなみに私のデフォルトはマラーホフ) 吉岡さんは、驚愕の少女っぷりを見せてくれた。薔薇の精に操られ、夢遊病者のように踊る少女は、見ようによってはかなり妖しい。夢から醒め、うっとりと夢の余韻に浸る表情は、犯罪的な可愛さだ。 ●「ペトルーシュカ」 振付:ミハイル・フォーキン 音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー ペトルーシュカ:首藤康之 バレリーナ:小出領子 ムーア人:後藤晴雄 シャルラタン:高岸直樹 首藤@ペトルーシュカは、終始哀しそうで、正視するのがつらいほどの痛々しさ。誰とも心を通わせられない孤独感、バレリーナへの恋心、恋敵のムーア人への憎しみなど、人間と同じ心を持ったゆえに悩み、悶える。小出@バレリーナは、とてもキュートで魅力的。後藤@ムーア人は力強く傲慢。三者の心理描写が明確でわかりやすく、物語の世界に容易に入り込めた。 場面転換の度に、サンクトペテルブルグの夜空を物の怪が飛び回っている図柄のおどろおどろしい幕が降ろされ、さらに幕が上がるまでの間ずっと”ダダダダダダダダダ…”と小太鼓の音が響く。どこか低俗でいかがわしい、見世物小屋的な雰囲気で◎。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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