|
カテゴリ:カテゴリ未分類
![]() 火の鳥(2(未来編)) 西暦3404年、進みすぎた文明のために地球は病み、地表は荒れ果てて、人々は地下に住んでいる。 世界五つの都市に分かれ、それぞれの都市の決定はマザーコンピューターに委ねられ、その決定事項に従い政治・外交が進展していく。 ある日、亡命者を引き渡す、引き渡さないでマザーコンピューター同士が衝突、戦争に発展、各都市の上層部は戦争をやりたくないが、マザーコンピューターの決定には逆らえず、戦争に発展。 西暦3404年の戦争は、宣戦布告・開戦の時間に、スパイが仕掛けた超水爆が発動、一瞬で五つの都市は壊滅してしまう。 …と、あらすじをつまんで紹介したが、これは前半である。 なぜ前半のあらすじを説明したのかというと、「コンピューターに支配されている」というのがこの21世紀ですでに起こっているからだ。 人間はコンピューターに支配されたいんだ、たぶん。 決定を、手段を、コミュニケーションを、娯楽をコンピューターに委ねてしまった結果、人間は「自ら思考する」ことを放棄してしまったように思える。 機械の手の平で踊っていたいだけなんだ。 私はなんとかそれに抗おうとはしてるんだけど、すでに機械の手の平にいるんだ。 それに気付きたくないから、抗いのスタンスを取ってるんだと思う。 それまで無くても生きてこられたのに、その恩恵を受けたばっかりに、もうそれ無しでは生きていけないというものがたくさんある。 物語中のマザーコンピューターもSFの作り話ではなくて、もうすでに現実に起こっていることなんだと、描いていた当時の手塚先生は気付いてたんだと思う。 主人公は山之辺マサトという青年だが、彼が戦争の引鉄となった亡命者である。 彼は戦争勃発時、地上の猿田博士のドームにいたために、戦争に巻き込まれずに済むが、そのドームにも放射能が漏れ入り、猿田博士と、マサトと同じ亡命者のロックは死ぬが、マサトは火の鳥の力で死なない体となり、最後の人類として生き残る。 ネタばらしをすると、マサトは死なないので、肉体は朽ち果てても存在は地球に残り、新たな生命の進化を見守り、新たな人類に「神」と呼ばれる存在になるのだ。 ひとり生き残ったマサトの苦しみ。 何度も自殺を試みるが、死ねない。 人口冬眠のカプセルを見つけ、それが開封される五千年間、ずっと心待ちにいているが、開けてみたら粉々になってしまっていたときの悲しみ。 ロボットや人口生命を開発してもうまくいかない。 とうとう存在だけになり、新たな人類が誕生、自分ごときが彼らに「神」と崇められる滑稽さ、新たな人類の哀れさ。 『未来編』とうタイトルだが、後半は『原始編』とも『創世編』とも呼んでいい内容。 猿田博士は、『火の鳥』のレギュラーと言っていい存在。 時代や境遇や名前は変わっても、その醜い鼻を持つ風貌は、作品のどこかに登場している。 誰かが言っていたけど、モデルは手塚先生自身なんだろう。 非常に強欲で、愛を求めていて、人間的である。 ※ちなみに、この巻のどこかに「手塚治虫の50代目の孫」が出てくる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 25, 2005 11:56:45 AM
コメント(0) | コメントを書く |