黄砂が飛来すると、上空にフタをして大気の対流を妨げるため、自動車の排ガスなどの大気汚染物質の濃度が上昇することが、気象研究所の常松展充・重点研究支援協力員らの研究で分かった。
黄砂は洗濯物などを汚したり、大気汚染物質を運んできたりして厄介視されているが、もう一つ、問題が浮かび上がった格好だ。21日から茨城県つくば市で開かれる日本気象学会で発表する。
常松さんらは、昨年4月に首都圏上空を黄砂が通過したケースを、気球やレーザーを使った観測で詳しく分析。上空500~4000メートルの黄砂を含む層の温度が、下の空気よりも約10度高いことを確認した。通常は、上空になるほど温度が下がって対流が起こり、空気がかき混ぜられる。ところが、逆転現象により、上空では対流が妨げられ、観測を行った首都圏では、排ガスなどの大気汚染物質の濃度が上昇した。
黄砂の層は、中国やモンゴル内陸部の砂漠の暖められた砂じんや空気を含んでいるため、温度が高くなっていると考えられる。先月18日に東京で黄砂を観測した時にも、こうした温度の逆転現象が確認できた。
常松さんは「黄砂は上空を通過するだけでも環境に影響を与える可能性が高い。大気汚染測定局のデータなども詳しく分析したい」と話している。(参考=5月3日 読売新聞)