環境・平和・山・世相　コジローのあれこれ風信帖

　金曜日の菅首相による浜岡原発停止要請から４日経った昨日９日、中部電力はようやくこの要請を受諾し、数日内に全炉を停止すると発表した。この決定に至るまで中電は、夏場の電力不足がどうたら、火力発電に使うＬＮＧ原料の確保がどうたら、コスト増をカバーする電気料金値上げがどうたら等々、同電力管内の需要者の不安を掻き立てる材料を並べて政府の要請受け入れへの回答を先延ばしし、さらには会長をブルネイに急きょ派遣してＬＮＧの買い付けに当たらせるなんて実に見苦しい猿芝居を演じた。

　少し考えてみればいい、そのへんの町工場じゃあるまいし、総資産５兆円超、従業員17000人を擁する巨大企業のＣＥＯ（最高経営責任者）が、たかが燃料の買い足し程度で泡食ってすっ飛んでくかあ、フツー？  それとも、中電はそれほどまでに人材不足で取締役会以下社員一同、会長がいなくては燃料の買い付けも出来ないボンクラばっかということなのか。とすればまあ、そんな無能集団に原子力など「ナントカに刃物」というほかないのであって、やはり浜岡原発は完全廃炉以外にないということになるぞ。

　ともあれ、こういうのを日本語で「往生際が悪い」というのだが、まあ、この国のクソの役にも立たないマスコミはこぞって、このサル芝居のお囃子役を務めるのだ。手法は例によってメディアの意図に沿って編集されたインタビュー。政治家や識者それに街頭の市民がこもごも語るのだが、「手法が唐突」とか「説明不足」とか「雇用が心配」とか、まあ福島が見せつけた恐ろしい原発事故再発の可能性という、浜岡原発の今を巡るコトの本質とはおよそ関係のない些末な話ばっかこね回すばかりだ。

　ことに、これまで原発を推進してきた自民党も公明党も財界その他、「浜岡原発断固運転継続！」と主張する者が一人もいないのはどうしたことなのだ。ふん、ごちゃごちゃ言いながら、結局、自分たちのこれまでの責任は頬被りしたまま、こっそり軌道修正して逃げてるだけじゃないか！　・・・のくせに、エラソーな口、きくんじゃねえ！　で、その典型的な例がまたもや米倉弘昌日本経団連会長の妄言だ。米倉は9日の定例記者会見で「今後３０年間で８７％の確率で東海地震が起きるとの確率論だけで停止要請したのは唐突」「結論だけがぽろっと出てきて思考の過程が全くブラックボックス」などと話したという。

　あのな、浜岡原発は建設計画が明るみに出た1960年代から猛烈な反対があり、早くも81年には不破哲三共産党書記局長（当時）が国会で地震による原発事故の恐れを指摘したほか、多くの専門家が危険性に警鐘を乱打してきた代物。近未来ほぼ間違いなく起きる巨大地震の想定震源域のど真ん中に原発を建てるなど、世界ではそう話してもにわかには事実と受け止めてもらえないほどクレージーな存在なのであって、そもそも建てたこと自体が大間違いだったのだ。

　だから、唐突もクソも、今この瞬間にも起こりうる地震に備え、一刻も早く止めるのは誰が考えたってあったり前の対応であって、その程度のことすら理解できないお前の脳みその方こそ、ボケやヒビが入ったブラックボックスなのではないかと、ごく人並みに普通の脳みそのコジローにはこのモウロクした爺様に率いられる住友化学社員の運命が心配になったりもするのだ。まあ、こんなオツムにカビが生えて蜘蛛の巣が張ったようなお粗末な御仁が財界総理なのであるからして、つい昨日まで社長がひとつ下の副会長として仕えていた東京電力の無能無策のていたらく、推して知るべしとはいえるかもしれない。

　マスコミが麗々しく承って垂れ流す我が経済大国の財界指導部の思考レベルなんて、悲しいかな所詮はこの程度のモウロウぶりなのだ。一方、スズキや川崎重工の経営者が浜岡原発停止を支持したのは、あえて褒めるほど大層なことではなく、ごく常識的な判断といえよう。　　・・・にしても財界総理なあ、孫正義クンに是非お願いしたいが、それが無理ならせめてあんたら、もう完全に終わっちゃってる米倉に代わってやれよ。

　そうそう、この話題に関連してだが、今日の毎日新聞のコラム風知草『暴走しているのは誰か』は実に良かった。この正月、地球温暖化対策を巡る桁外れの妄言に怒ってぶった切った毎日新聞だったが、こんなまともな意見が載るなら再度購読してもいいかなと思い始めている。・・・ほど、代わりにとった朝日新聞もひどいということなのだが、ともあれ風知草・山田孝男氏の言　「福島の、あれだけの惨状を直視して原発依存を見直そうという常識と、福島を見くびり、過去の惰性に開き直る時代錯誤との戦いである」に、全面的に熱く同意する。

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