66545263 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

FINLANDIA

FINLANDIA

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Calendar

Category

Keyword Search

▼キーワード検索

Archives

2024年05月
2024年04月
2024年03月
2024年02月
2024年01月
2023年12月
2023年11月
2023年10月
2023年09月
2023年08月

Freepage List

2020年06月10日
XML
テーマ:老荘思想(128)
カテゴリ:道家思想

 
Above the Clouds
Photo by Hilton Chen
images.jpeg
 
 
 

 

道家思想篇 90 老子 歸元第五十二


  「天下に始〔はじめ〕有〔あ〕り、
  以て天下の母と為〔な〕る。
  既〔すで〕に其の母を知り、復〔また〕其の子たるを知る。
  既に其の子をたるを知り、復〔また〕其の母〔はは〕を守れば、
  身を沒するまで殆〔あやう〕からず。
  其の兌〔あな〕を塞ぎ、其の門を閉〔と〕づれば、
  終身〔しゅうしん〕勤〔つか〕れず。
  其の兌〔あな〕を開き、其の事を濟〔な〕せば、
  終身〔しゅうしん〕救われず。
  小〔しょう〕を見るを明〔めい〕と曰〔い〕い、
  柔〔じゅう〕を守るを強〔きょう〕と日〔い〕う。
  其の光を用いて、其の明〔めい〕に復歸〔ふっき〕すれば、
  身〔み〕に殃〔わざわい〕を遺〔のこ〕す無し。
  是〔これ〕を習常〔しゅうじょう〕と謂〔い〕う。」
 
 
   天下有始、以為天下母。
   既知其母、復知其子,
   既知其子、復守其母,
   沒身不殆。
   塞其兌、閉其門、終身不勤。
   開其兌、濟其事、終身不救。
   見小曰明、守柔日強。
   用其光、復歸其明、無遺身殃。
   是謂習常。
   
  
  
   (Returning to the source)
   (The Dao) which originated all under the sky is to be considered as the mother of
  them all.
  When the mother is found, we know what her children should be.
  When one knows that he is his mother's child, and proceeds to guard (the qualities of)
  the mother that belong to him, to the end of his life he will be free from all peril.
  Let him keep his mouth closed, and shut up the portals (of his nostrils), and all his life
  he will be exempt from laborious exertion. Let him keep his mouth open, and
  (spend his breath) in the promotion of his affairs, and all his life there will be no
  safety for him.
  The perception of what is small is (the secret of clear- sightedness; the guarding of
  what is soft and tender is (the secret of) strength.
  
  Who uses well his light,
  Reverting to its (source so) bright,
  Will from his body ward all blight,
  And hides the unchanging from men's sight.
     
   ( Daoism -> Dao De Jing
 
 
 
 
 「天下(の万物)には(それを産み出す)始めのもの(即ち道)があった。
 それが(万物を産んで)天下(の万物)の母となった。
 (私は)既に(我々万物を産んでくれた)母(即ち道)を知り、
 (自分らが)その子であるという事を知っている。
 一旦(自分が道から生まれた)子であることを知り、
 またその本たる母(即ち道)を守るならば、生涯安全である。
 
 (では道を守り身を安全に保つには具体的にどうしたら良いか。)
 耳・目・口・鼻を塞ぎ門を閉じよ。
 (外物の誘惑をないようにし、妄聴・妄視・妄言・妄嗅を慎むことだ。)
 そうすれば、生涯労苦することがない。
 (その反対に)耳・目・口・鼻の穴を開き、
 それら(感覚器官)の仕事をいよいよ益すならば、生涯救われない。
 
 (また道を守り身を安全に保つには具体的にどうしたら良いか。
 明であれ、柔であれ。)
 小(さな兆〔きざし〕)を見る(ことの出来る)者を(真の)明(者)という。
 柔(弱なる態度)を守り続ける道を(真の)強者という。
 その(明知)の光を用い(微小な兆を看破してこれに処し、)(そしてまた)
 その明知の中に(光)を復帰せしめ(いらずらに外を耀〔かがや〕かさない。)るならば、
 身に殃〔わざわい〕を遺〔のこ〕さない。
 これを襲常(常道を内に包み蔵してその光を外に耀かさない)という。

 
 [余説]この章は、本文に段落を施したように、三段に内容が分けられ、
 格段の連絡が、一見するとなかなか困難である。
 そこで、錯簡の疑いが持たれ、馬敘倫・竹内義雄博士など、種々の意見を述べておられるが、
 私としては、現代人の論理で古代の文献に整理を加えることに一抹の疑念を抱いている。
 勿論はっきりとした証拠があれば錯簡を正すのは結構であり、
 またなさねばならぬことであるが、単に現代人の頭で考えて、
 意味が続かない、論理が通らないという事で、手入れを施すべきではないと思うのである。
 そこで、しばらく本文に即して、できるだけ意味の続くようにと、
 さまざまな思いをめぐらし補足を加えて、右のように訳出して見た訳である。」
 
 (新釈漢文体系 7 『老子 荘子 上』P.91,92 明治書院発行)
 
 
 
 『世界には始めがある。
  それは世界の母と呼ばれる
  その源を知ったものは、
  その表れを知る。
  その表れを知り、
  その源とともにとどまるとき、
  人生で不足することはない。
  言葉による表現をやめ、
  感覚への道をふさぐならば、
  一生くだびれることはない。
  これに対して、言葉が満ちあふれ、
  わずらわしさが増すならば、
  一生救われないだろう。
  見えないものを見るのが覚醒〔かくせい〕であり、
  柔らかさを保持するのが強さである。
  内なる光によって覚醒にかえれ。
  そうすれば、不幸にならない。
  これは真実に従った暮らしと呼ばれる。
 
  注釈
 
 『言葉への道』でハイデッガーはいう。
 「言葉は口の花である。言葉によって地球は空の花を咲かせる」。
 ハイデッガーによると、
 「『花のような』言葉を言うことは『視野をさえぎる』ことでなく、
 最大の視力に目覚めることである。
 ここで『例証』されるものは何もなく、言葉は有の源を保持するようにあともどりする」。
 老子は「世界に始めがある・・・・・・その源を知ったものは表明を知る」という。
  ハイデッガーにとって、言葉は表明である。
 言葉の源は「世界が表わせられるように言うことである。
 ・・・・・・話す音、言うことを源のしるしとして、あいまいで不思議なものである。
 けれども、それは単純な現象を表わしている。
 いったんその方法に気づくと、その現象を見ることができる。
 それは、言うという様式近くに進み行くものである」。
 老子は「見えないものを見るのが覚醒である」という。
  ハイデッガーにとって「近く」とは「近くにいること」を意味している。
 この近さは「言うこと」そのもので、その本質は「世界の輝きが隠れている申し出」である。
 そして、もどることによって、「言うこと」の近くに達する。
 それは「すでに存在しているところでへもどること、
 いま必要な思惟(しい)方法にそってどのように歩まなければならないかということ」である。
 老子にとって、もどるということは、言葉の表現に止まり、感覚がやむときに達せられる。
 彼は「内なる光によって覚醒にかえれ。・・・・・・これは真実に従った暮らしと呼ばれる」という。
  母という源とその表れについてはヘルダーリンの詩によって例証できる。
  
  白(光)は瞬間である。だが、神々を救うものが地球をよく知るのだ。
 
  このように、光は源にとどまり、その表明を知るようになる。
 これに達すると人は真実の本性と同一になる。』
 
 (張鍾元 著 上野浩道 訳『老子の思想』P.238~240 講談社学術文庫)
 
 (つづく)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2020年06月13日 04時00分23秒



© Rakuten Group, Inc.