215326 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

佐遊李葉  -さゆりば-

佐遊李葉 -さゆりば-

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

vyゆりyv

vyゆりyv

カレンダー

カテゴリ

カテゴリ未分類

(0)

露野

(129)

心あひの風

(63)

孤舟

(59)

かるかや

(68)

蒼鬼

(253)

光明遍照

(53)

山吹の井戸

(52)

きりぎりす

(217)

遠き波音

(50)

羅刹

(193)

コメント新着

vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -193-(10/05) 千菊丸2151さん いつもお読みいただいて…
千菊丸2151@ Re:羅刹 -193-(10/05) 是非このブログを残してください。 ゆり様…
vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -192-(09/14) 千菊丸2151さん だらだら更新に最後まで…
千菊丸2151@ Re:羅刹 -192-(09/14) 漸く完結しましたね。 ちょっと後味が悪い…
vyゆりyv@ Re[1]:羅刹 -190-(09/08) 千菊丸2151さん 花山院皇女は惚れた弱み(…

サイド自由欄

QLOOKアクセス解析
2006年09月13日
XML
カテゴリ:孤舟
 朝靄の切れ間から、髑髏(しゃれこうべ)がひとつ、こちらを見つめていた。

 虚ろに開いた眼窩から、弱々しい薄が延びかけている。黄ばんだ頭蓋骨の上を、巣穴にもぐり損ねた季節外れの大きな蟇(ひき)が頂きへと攀じ登ろうとしていた。

 鴨川の河原の砂地に半ば埋もれた、どこの誰とも知れぬその髑髏の眼差しに、小麻呂はふと背筋が寒くなるのを覚えた。だが、先を行く藤太はまるで気にも止めず進んで行く。そして、その髑髏を蟇ごと蹴り飛ばすと、小麻呂に振り向いて言った。

「もう、この辺りでいいじゃろ」

 二人は担いでいた長い木の箱のようなものを、髑髏のあった砂の上に下ろした。傾いた拍子に上に掛けていた筵がずれて、中のものが見える。

 それは、年老いた老婆の死骸だった。

 藤太は粗末な棺の中を覗き込みながら言った。

「さきくさの嫗(おうな)もとうとう死んだか。ずいぶん長患いじゃったの。これで禅師殿もせいせいしたじゃろ」

 自分もせいせいしたと言わんばかりに、藤太は両手を叩いて塵を払い、腰に下げていた手拭いで顔を拭った。小麻呂も藤太の陰からそっと棺の中を覗いてみる。ずれた筵の隙間から、無数の皺が刻まれた青白い額と、そそけ立った白髪の束が見えた。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006年09月13日 10時10分59秒
コメント(0) | コメントを書く
[孤舟] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.