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佐遊李葉  -さゆりば-

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2013年10月11日
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カテゴリ:遠き波音
 几帳の帳が揺らぎ、桧扇で半ば隠された白い面輪が現れた。節目がちだが、その唇には微かに笑みの色が浮かんでいる。

 多聞丸はその面輪をまじまじと見つめていた。

 削(そ)がれたばかりの艶やかな鬢(びん)の髪、黒目のはっきりとした潤(うる)んだ眼差し、ぱっと花が咲いたような鮮やかな唇。ほんのりと頬を紅色に染めた美しい顔は、その名の通り、正に吉祥天女のようであった。

 多聞丸は、この日始めて見た隣家の娘の麗しさに見とれるあまり、ただ黙って大人しく座り込んでいたのである。

 多聞丸がじっと見つめていると、吉祥はその視線に気づいて、恥ずかしげにまた几帳の陰に隠れてしまった。父はそんな多聞丸と吉祥の様子を見て、明るく笑いながら言った。

「多聞丸に吉祥か。これはなかなか良い取り合わせではないかな」

 多聞天とは別名毘沙門天ともいう勇猛な戦神であり、吉祥天はその妻となった美しい女神である。それに気づいた中務大輔も、側の娘に囁いた。

「おう、これは面白い因縁かな。前世からのご縁があったのかも知れぬ」

 二人の父親は、互いに杯を交わしながら、高らかに笑い合った。そして、その話はその場の楽しい座興の冗談として、いつの間にか忘れ去られてしまったのだが……。

 多聞天と吉祥天。この夫婦神に因んだ名を偶然持っていたことは、この時多聞丸の心に深く刻み付けられた。

 もしかしたら、この美しい人が自分の妻になるのかも。

 それは、多聞丸の幼い胸に灯った、小さな小さな灯りであった。

 それが、後に地獄の劫火(ごうか)になろうとは、その時の多聞丸には想像することもできなかったのである。


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最終更新日  2013年10月11日 15時35分13秒
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