|
カテゴリ:羅刹
斉子女王はすらすらと能季が頼んだ口上を口にする。
思いがけず腹の据わった斉子女王の態度に、能季の方が面食らっていた。 やはりあの聡明だった小一条院のお血筋なのか。 斉子女王の貴人らしい毅然(きぜん)とした振る舞いと、姫君らしい優しげな雰囲気に、道雅の方もどうやら感歎しているようだった。 「それは、お優しい御心ですなあ。亡き御方もお喜びになりましょう」 「でも、わたくしはちょうど物忌みの時期にあたっており、墓所へ直接行くのは方角が悪うございます。陰陽師がいうには、一旦西の京へ居を移し、その後改めて常盤へ赴けば良いとのこと。それで、急遽こちらへご厄介になることに。ご迷惑をおかけして申しわけありませぬ」 「いやいや、西の京はご覧の通り草地や畑ばかりですからな。尊い姫宮をお迎えできるような屋敷はこの小八条第以外にはございませんでしょう。それに、我が家にとっても名誉なことで」 「でも、あなたとわたくしとは何のゆかりもございませんのに」 「いや、他でもない関白殿のご依頼とあらば、どなた様であろうと大歓迎でございます。それに、あなた様は小一条院の姫宮。小一条院は私にとっていろいろと思い出のある懐かしい御名でございますれば」 ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|