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カテゴリ:羅刹
「父院のことをよくご存知なのですか」
「はい。若い頃は何度もお会いしたことがあります。それに、その他にもいろいろと思い出が。あなた様のお声を聞いていると、遥か昔に聞いたある御方のお声を思い出します」 やはり切り出してきた。 能季はぐっと拳を握り締めた。 斉子女王も俄かに緊張したようで、小さく一つ息を吐いた後、改めて道雅に尋ねた。 「もしかして、それはわたくしの叔母上のことではございませんか」 「それは……」 「当子内親王様とおっしゃるお方です。父院の同母の妹君であられた」 道雅の顔に変化が現れた。 それまで面を覆っていたつるりとした上機嫌は消え、その代わりに訝(いぶか)しげな困惑と、それを押しのけるように何か歓喜のようなものが頬の赤みと共に立ち昇ってくる。 それと同時に、あの瞳の奇妙な光からは、冷たい無表情さが薄れ、獣じみた熱狂が湧き上がってくるように見えた。 道雅は僅かに声を震わせながら問うた。 「何故それをご存知なのですか」 ↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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